ここはみずのけの玄関前、旅行姿の次女と三女むゑが大きなリック
サックを抱えて気勢を上げている.

「それでは超人ネイガーのクリスマスライブ向けて
 秋田にしゅっぱーつするぞーっ!」
「いえーぃ」
「目標は超人ネイガーと握手だーぁ!」
「いえーぃ」
「さて、私は愛機XR250で行くが、むゑは後ろに乗るか?」
「いいえ、お姉さま、
 むゑはこの轟天号でいくですよ」
「うむ、それなら私がひっぱってやろう」

次女は特製XR250の荷台に牽引用のロープを結わえると、こん
どはその端をむゑのランドナ(自転車、ただし空を飛ばないものだ
けを指す)のハンドルのところにしっかりと固定した(←よいこは
絶対まねをしてはいけません)

「それではしゅっぱーつ!」
「いえーぃ」

次女はXR250のエンジンを入れるとゆるゆるとバイクを前進さ
せる、するとうまい具合にむゑのランドナ(自転車、ただし空を飛
ばないものだけを指す)も引っ張られてするすると走るのでした.

「わーい、らくちん、らくちん」
後ろのむゑも大喜びです。
そんな調子で前途洋洋の二人が大通りにつながる交差点にさしかかっ
たときでした(←くれぐれもよい子はまねをしてはいけません)
傍の路地から飛び出してきた原付スクータがパパラピッピーと人を
嘲笑うかのような警笛を鳴り響かせて次女の乗るXR250の鼻先
を追い越していきました。

「むっ………っ」
フルフェースのヘルメットのシールドがカタンと降りる、クラッチ
がカッカッカッカッと小気味よく音を立てるとたちまちXR250
のエンジンは5000回転に跳ね上がり弾丸のように飛び出したの
でした。

「に”ゃーーーっ」

それからどうなったか知りませんが、以来むゑは次女とは一緒に旅
行をしなくなったということでございます.

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のりたま@ようやく古典落語全六巻読み終えました