先に米下院が「北京五輪下での人権抑圧をするな」という主旨の声明を可決した。
 これに対して、中国は、「北京五輪を潰そうとする悪質な陰謀だ」として抗議したが、米下院の判断は正しかった。
 米議会は、五輪を機に「人権問題を世界に訴えようとする、中国の人権家の予防拘禁を心配したのであろうが、事実それもあったが、人権抑圧は別の形でも現れている。
 それは、貧しい者たちへの抑圧である。
 北京では、内陸地からの100万人もの出稼ぎ労働者を強制的に首都圏から締め出したり、みすぼらしい外観の小さな商店を強制撤去したり、汚らしいビルを張子の壁で覆ったり、北京の街の見てくれを良くすることに躍起になっている。
 そればかりではなく、地方政治への不満を中央に訴えに来る、日に何百人もの陳情者までが、拘束され、地方警察に引き渡されている、と報道されている。
 その気持は分からないでもないが、内陸からの出稼ぎ労働者は、その殆どが五輪施設などの建設工事の労働力として貢献してきた人たちであろう。
 彼等を、もう用は済んだ、目障りだ、とばかりに、ゴミ処理でもするかのように、首都から掃き出すのは、ひどすぎる人権蹂躙である。
 彼等の不満が、五輪テロとか五輪の円滑な運営妨害行為に走らせない、という保証はないのだ。
 政府は、人海戦術の警備で万全を期すつもりなのであろうが、何事もないことを願うばかりである。
 村上新八