窓から木漏れ陽がかすかにのぞく小さな部屋、夏だというのに
   締め切った部屋の中で動いているものは天井でゆっくりと旋回
   して空気を攪拌している大きな羽根の扇風機だけ。
   パタパタと人の足音がして「ただいまー」と間延びした声がする。
   扉が開く夢絵が買い物袋を抱えて部屋に入る。

   水野「さくらちゃん、おりこうにしてたぁ〜?」

   しかし、返事がない立ち尽くす夢絵、天井では扇風機の羽根が
   ぎーぎーときしむ音をたてる。

   水野「さくらちゃん、さくらちゃん
   どうしたのどこか具合が悪いのさくらちゃん、さくらちゃん!」

   持っていた買い物袋を抛り投げ夢絵はぐったりしたさくらを
   ゆすったり叩いたりする。
   しかし、さくらはその閉じた瞳を開けようとしない。

   水野「さくらちゃん、しっかりしてぇ
   お願い、目をあけてわたしをひとりぼっちにしないでぇ〜」

   さくらは眼を開く、しかし動作には生気がない。
   さくら「あぁ、おねーちゃん……」

   水野「さくらちゃん、どうしたのどこか具合が悪いの?」

   さくら「さくら、もうだめかも……おねーちゃん……ごめんね
   おねーちゃん……とってもたのしかった……
   たくさんのおもいでありがとう」

   水野「なにを言っているのさくらちゃん
   さくらちゃんしっかりしてっ」

   半泣きでさくらにしがみつく夢絵をちからなく見上げるさくらの
   目元にも涙がにじむ。

   さくら「さくら、たのしい思い出と……いっしょに天国にいくの……
   しあわせ……」

   水野「さくらちゃん、さくらちゃんーーーー」

   **** 暗転 *****

   

水野「ってことがありました」

柏崎「なんだ回想かよっ、
   それでさくらちゃんは大丈夫だったんですか?」

水野「あのね、それがメモリが一枚ダメになっていただけなの
   新しいのをアキバで買ってくるので大丈夫
   今は片枚だけで元気にしてるわ」

柏崎「ヲイヲイ、人間じゃねーのかよ、さくらちゃん」

水野「もう暑い日が続くと大変ですよ
   それでは今日の放送はここまでです
   みなさんさようなら」

柏崎「司会は『プロフェッサー・レオ』役の柏崎と」

水野「はい、
   『姫ちゃん』役の水野夢絵17歳(←オイオイ)
   でした」

明け方の電離層崩壊で電波が細くなっていく
やがて雑音と区別がつかなくなる。

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のりたま@人のブログでネタを探していると
     ストーカーになったような気分です(←いやそれストーカーだから)