四川省地震では、テレビ映像でみる限りは、火災は起こってはいないようだが、建築物の倒壊被害は目に余るものがある。
 民家は古く、かつ煉瓦をモルタルで積み重ねたような建築だから、ひとたまりもなかったことは分かるが、コンクリ−ト建ての構造物の倒壊もひどい。
 中国政府の建築関係元官僚の話では、建築許可に絡んでの官僚による収賄が耐震強度に関係していると言う。
 たとえば1000万円の建築許可を得るのに、200万円くらいの賄賂が必要になり、それだけ工事予算が減るから、手抜き工事にならざるを得なくなり、耐震強度が弱まるのだという。これは明らかな人災要因である。
 官庁の倒壊は少ないが、小、中学校が軒並み倒壊して、多数の生徒が生き埋めになっていることも事実なのである。
 中国は、経済の高度成長、所得格差の拡大に応じて、官僚の収賄も激しくなってきている、と聞くが、さもありなんとという感じもする。
 四川省地震は、阪神大震災の30倍以上の激しいものであったことは事実だが、地震多発地帯であるにも拘わらず、耐震基準も低く、更にこのような人災要素もあるとすると、中国の急速な高度成長の陰に隠れた大きな歪みが大地震によって顕在化したものといってもよかろう。
 村上新八