もう2ヵ月遅れになっちゃいましたけど、ともあれ。

3月号は、2007年度英米SF受賞作特集。つうても、今年度は世界SF大会
が日本で行なわれた関係上、ヒューゴー賞関係の作品はすでに去年の夏
頃に掲載済み。なので今回は、ヒューゴー賞ノヴェラ部門「十億のイブ
たち」(ロバート・リード)、ネビュラ賞ショートストーリー部門「エコ
ー」(エリザベス・ハンド)、ローカス賞ノヴェレット部門「シスアドが
世界を支配するとき」(コリイ・ドクトロワ)の3作品。

このうち「十億」は、ほかの候補作を読んでないんで比較はできないけ
ど、これ自体は確かに面白かったです。パラレルワールドに転移する装
置が発明された世界で、女にふられた男子大学生が、腹いせに盗んだ装
置を女子寮に横付けして、男女比1対100の集団転移を果たしてから幾星
霜。という、そっちの世界の物語。この基本設定自体は(私のような)バ
カ男が夢見がちなものだけど、そんなに単純な話ではなかったです。ま
あ、結末のあたりは多少ありきたりな感じもなくはなかったけど。なぜ
人類の居住に適する並行世界が少ないのか、とかその辺の話も面白かっ
たし。

「エコー」は、破滅した(らしい)世界であえて孤立して生きる主人公の
暮らしを描いた、淡々とした話。物語つうより雰囲気もの、みたいな。

「シスアド」は、これまた破滅しちゃった世界のお話。こちらの破滅の
原因は、オウムの残党によるソウル市の地下鉄での毒ガス散布を皮切り
とする、核兵器あり生物兵器ありの多発的連鎖的大規模テロ。主人公と
なるのは、(テロの最初の段階で)ダウンしたシステム復旧のため、堅固
な計算機センターにこもっていた人々。これだけ大規模なテロリストの
連携を可能にしたのはインターネット。それに対して軍隊や警察はそれ
ほどネットを必要としていない。ならばネットは維持すべきなのか。膨
大な労力をかけて維持してみたって、どうせウイルスやスパムが跋扈す
るだけ。とかそんな議論を含みつつ。でもまあ、いったん破滅しちゃっ
たとはいえ、復興の方向に進んでいく話なので、基本的にはわりとポジ
ティブな気持ちで読めました。

あと、この作品にはネットニュースの話も出てくるんですけどね。テロ
発生からまもなく「alt.なんとか.disaster.recovery.かんとか」みた
いなニュースグループができて、とか。ああ、海の向こうではまだまだ
ネットニュースが元気なのか、とか思っちゃったり。たとえそれが専門
家のあいだだけの話であったにしても。
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AMAUMA