衝突された「清徳丸」の乗員親子は以前行方不明のまま、僚船の捜査は遭難した家族の希望で打ち切られた。
 非は全面的にイ−ジス艦側にあることが鮮明にはなったが、当の最高責任者である艦長は未だに顔も出さず、名前さえ伏せられたままである。
 海上自衛隊の中で最強の新鋭イ−ジス艦の艦長だから、制服組のなかでもエリ−ト中のエリ−トなのだろう。
 官僚のなかには、官庁の如何を問わず、官僚エリ−トを傷つけてはならない、とい不文律みたいなものがある。
 このような配慮があるから、艦長を表に出さないのだ。恥をかかせると出世の妨げになるとでも考えているのに違いないのである。
 官庁では組織ぐるみの悪事をやるときでも、お縄頂戴のリスクのある汚れ役は常に非エリ−ト層に押し付けて、エリ−ト達は口を拭っているのである。
 今度の書と津事件では、周囲がどう止めようとも、自分で進んで表に出て、キッパリと原因を説明してお詫びをすることこそ武人の誇りだという認識もないようだ。
 こんな奴は、武人のかけらもない奴で、軍人として完全失格だ。腹を切ってお詫びしろとまでは言わないが、辞職するか、一兵卒に降格させるくらいは当然だろう。
 村上新八