7月号に続き、中短篇部門のヒューゴー賞候補作が掲載されてて、気に
なってたので、図書館で読んできました。そこからいくつか。

○パオロ・バチガルビ「イエローカードマン」(ノヴェレット部門)
http://www.asimovs.com/_issue_0704/yellowcard.shtml

解説にいわく、「化石燃料が枯渇し、代替燃料を産み出すバイオ企業が
支配する世界が舞台のディストピアSF」。同じ設定の「カロリーマン」
(3月号掲載)で、スタージョン記念賞受賞、とのこと。せっかくなので
両方読んでみましたが、個人的には「カロリー」のほうが上かな、と。

「イエロー」のほうではほとんど触れられてない(と思った)んですが、
作中のバイオ企業については、自社の種苗(不稔性)を売るため、既存の
農作物にとって致命的なウィルスを撒き散らしている(らしい)という設
定がありまして。で、「カロリー」のほうは、確かにそういう世界なら
ではの物語になってると思いましたが、「イエロー」のほうは、ただの
惨めな男の話、みたいな。作品の世界設定とはあんまり関係ないかな、
と。最後に希望が残される分、「カロリー」のほうが読後感も良いし。

○イアン・マクドナルド「ジンの花嫁」(ノヴェレット部門)
http://www.asimovs.com/_issue_0704/thedjinnswife.shtml

要するに、仮想現実版「銀色の恋人」。と言ってしまえば、まあそれま
で。いやまあ「銀色の恋人」自体、どんな話だったかほとんど覚えてい
ないけれども、とりあえず、そんな感じ。

解説によると、2004年に英国SF協会賞を受賞した「River of Gods」と
同じ世界観の作品だそうですが。「イエロー」と同様、この作品自体は
そんなに面白いと思いませんでした。まさか、単に過去の話題作の関連
作品だからノミネートされた、ってんじゃないでしょうな。

○ニール・ゲイマン「パーティで女の子に話しかけるには」
(ショート・ストーリー部門)
http://www.neilgaiman.com/exclusive/shortstories/partiesstorytext

なんつうか、いかにもヲタク直撃、みたいなタイトル一発の作品。なん
て言ったら言い過ぎか。主人公の友達の「ただの女の子だよ。別の星か
ら来たってわけじゃなし」というセリフひとつでネタは割れちゃうし。
そんな作品がヒューゴー賞候補になっちゃうんだから、つくづく、みん
なアレだよねえ、みたいな。他人事として眺めてみると、ちょっと情け
ないかも。いや、他人事かどうかは別として。

ちなみに、物語としてのオチは、もちろん、そのネタがらみのものなん
ですが、これは別にそのネタじゃなくても成立しそう。SFじゃなくて、
SMとかでもいけるな。みたいな。でも、それってむしろSFらしい、って
ことなのか。とか考えてみたり。


7月号と8月号を通してみると、ノヴェレット部門のほうは、とりたてて
コレという作品はなかったような気もします。あえて言えば、個人的に
好きなテーマってことで、マイク・レズニック「きみのすべてを」か。

それに比べると、ショート・ストーリー部門のほうは、そこそこいい感
じ。とりあえず楽しかったという意味では、ティム・プラット「見果て
ぬ夢」がいちばん。面白いかどうかはよくわからないけど、なんとなく
SFを読んだ気がするという意味では、ブルース・マカリスター「同類」
か、ベンジャミン・ローゼン「あなたの空の彼方の家」。まあ、いずれ
にしても、私は大会に参加しないんだけど。どうなるかな、と。


なお、余談ながら、7月の新刊情報のところに、ティプトリーの長編を
発見。うお。こっちでは全然見かけなかったぞ。トランスフォーマーの
ノヴェライズは、確かに先月くらいから並んでたけど。
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AMAUMA