戦争には、砲火を交わす戦争のほか、武器でなく知恵で戦う戦争がある。
この「情報戦争」は、歴史始まって以来、有事平時を問わず日常的に行われている

国益が衝突する相手国の政治力や経済力や威信を低下させるための
「宣伝戦」や「心理戦」は、国際社会を巻き込んで勝敗を争う、
仮借無い戦争である。

国際世論を味方につけた国は良好な国際環境の中で国益を実現できるが、
逆に国際世論形成の努力を欠くと孤立化の一途をたどる。

日本は、金子堅太郎特使が米国に対して行った国際世論形成の成功が
日露戦争を勝利に終わらせた実績がある反面、

勝利に驕ったその後の日本が、中国やコミンテルンの国際世論工作も
あって孤立化し、勝てない戦争へと突入した。

靖国神社参拝問題において、政治家や評論家の中に、やめるべきとする意見があるが、 

それは、国際的に苛烈に戦われている「情報戦争の只中に日本が置かれていて」
中国が提起している「靖国問題」は「情報戦争の勝敗を決する橋頭堡」なのである
ということに気付かない、恐るべき無知に基づくのである。

中国は抗日戦争で悪虐非道な日本に勝利したことを存立意義とする
中国共産党一党支配の国である。
国家戦略の意思決定と展開は自在で、国際世論形成のための戦略戦術は、
手の内を内外に知らせることなく推進できる。

 しかも中国は、原子力潜水艦の領海侵犯に謝罪もしなければ、
暴徒化した反日デモによる大使館や総領事館に対する破壊活動が
歴然たるウィーン条約違反であるのに、原因を日本のせいにするなど、
国家が黒を白と言ってはばからない。

この種の歪曲、捏造は、中国においては1911年の辛亥革命以前からも、
事あるごとに政権によって行われてきたことである。

 こうした国を隣国に持つ日本にとって、戦う武器は
インテリジェンス(intelligence =知恵を働かせること)しかない。

情報戦争は、国民一人ひとりが当事者なのである。

国民が情報戦争のメカニズムを理解し、海外からの工作やテレビなどの
無責任な論調に動じることなく、国際世論形成の発信者となることが、
日本を孤立化させない力となる。