Path: ccsf.homeunix.org!CALA-MUZIK!newsfeed.media.kyoto-u.ac.jp!news.media.kyoto-u.ac.jp!not-for-mail From: =?ISO-2022-JP?B?GyRCOjQhOUxaGyhCIBskQjFRTy8bKEI=?= Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18) Date: Sun, 26 Nov 2006 09:24:37 +0000 (UTC) Organization: Public NNTP Service, Kyoto University, JAPAN Lines: 324 Sender: hidero@po.iijnet.or.jp Message-ID: References: NNTP-Posting-Host: zt067148.ppp.dion.ne.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP Content-Transfer-Encoding: 7bit X-Trace: caraway.media.kyoto-u.ac.jp 1164533077 10006 59.128.67.148 (26 Nov 2006 09:24:37 GMT) X-Complaints-To: news@news.media.kyoto-u.ac.jp NNTP-Posting-Date: Sun, 26 Nov 2006 09:24:37 +0000 (UTC) X-Newsreader: Sylpheed version 1.0.4 (GTK+ 1.2.10; i386-unknown-freebsd4.11) Xref: ccsf.homeunix.org japan.anime.pretty:12909 fj.rec.animation:7480 佐々木@横浜市在住です。 # 「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から着想を得て # 書き連ねられているヨタ話を妄想と呼んでいます。 # そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。 ★神風・愛の劇場 第175話『霧が晴れたら』(その6) ●桃栗町内 特に迷った訳はありませんでしたが、真っ直ぐにはスーパーに向かわずに町内を ブラブラ歩いていったエリス。夜とはいえ深夜では無い時間帯の住宅街では時折 人通りがあり、途中で何人もの人間とすれ違います。ですが彼ら彼女らがエリスを 見つめたり振り向いたりする事はありません。たとえその服装が街中ではとても 目立つ代物であっても。やがて遠回りをしながらもスーパーにたどり着くと、 ここでも直ぐに目にとまった玉子は後回しにして店内を歩き回りました。 魔界でも似た物を見かける食材や、全く何なのか判らない物などを興味深く 眺め、幾つかは手にとり感触や匂いを確かめます。そうして玉子ひとつ買うには 充分以上に長い時間をスーパーで過ごしました。 * 買い物を済ませ、スーパーのレジ袋をガサゴソと鳴らしながら街外れに向かう エリス。その後方の遥か上空からアクセスとトキが彼女を見下ろしていました。 「こんな離れて見失わないか」 アクセスの懸念に、トキはエリスから目を離さずに答えます。 「前に話したでしょう。私は彼女には後方視野があるのではと疑っています」 「ああ、言ってたなそんな事」 「可能性の段階ですが。本来の姿の竜族の者を見た事は」 「ある。資料でだけど」 「私も同じです。彼らの目は三つ、でも人の姿をとっている時には」 「三つめは皮膚の下に潜っちゃってるって話じゃ無かったっけ」 「誰もそれを確認していません。少なくとも戦場から敵の身体を持ち帰って 調べるという事をした記録はありませんし」 公には、と心の中で付け加えるトキ。 「でもそれはあの女が竜族なのかって話がまずあるだろ」 「勿論。ですから可能性の段階、仮定です。ですが用心するにこした事は ありません」 「あいつが悪魔族だったら一発で逃げられちまう」 「それならとっくに姿を消しているでしょう。悪魔族は徒歩で帰るほど人の 真似をする事に熱心ではありません」 「まぁな」 一方で真似をするまでも無く地面の上を往く者である稚空は、エリスの背後を 見失うギリギリの距離を保ちつつ追っていました。建物の影や店先から路上に はみだした棚や看板といった物の後ろを伝う様にして。あからさまに怪しい その行動に、時折奇異の目で見たり振り向く通行人も居ましたが不審そうな目を 向ける以上の事はありませんでした。それは当然の反応だろうと思う稚空。 同時に、物凄い美人とまでは行かずとも決して悪いほうでは無いと彼が判断する 程度には美形のエリスを見つめる通行人が全く居ない事は不自然だと考えます。 そして彼女との最初の遭遇の時の事と考え合わせ、堂々と歩いても誰の記憶にも 残らない策を講じているのだろうと推測します。ですから例え背後が見えている らしいという話が無くとも、これ以上接近するつもりはありませんでした。 * 値段や大きさの違う数種類の中から、結局一番安かったMサイズ十個入りを 十パック買ったエリス。レジで袋を二つもらい、五パックずつ二つに分けて 両手に持つと店を出ました。そして店の前、曲がり角と身体を回す度にさり気なく 周囲に視線を走らせます。最初の曲がり角で背後に、そして最初に信号で足止め された時には後方の空高くに夫々見知った姿を確認しました。 「(追いかけてこない程に能天気な連中で無くてよかった)」 少しほのめかしが足らなかったのではと心配していた胸を撫で下ろしつつ、 相変わらず急ぎもせずに家路へと向かいます。 * 追いかけている稚空がじれったく思う程に遅々として先へ進まないエリス。 スーパーを出てから十数分経った今は商店街の一番外れにある本屋の店先で雑誌を 立ち読みしています。両手に持っていたレジ袋を倒れない様に足の間に置き、稚空 の目から見る限りではかなり熱心にページをめくっています。様子を伺う彼の心に 身に着けた羽根を通してアクセスの声が囁きます。 「(うまそうだな)」 「(はぁ?)」 「(あいつが見てる本…雑誌って言うんだっけか、ああいうの)」 「(何の雑誌だ)」 「(いろんな飯がひたすら出てる)」 「(料理本か…)」 離れ過ぎていて何の雑誌なのかは判っていなかった稚空。アクセスからの情報で それと知るや、疑いも無く彼女らしいと思っていました。実際、この時のエリスは 時間つぶしから少し逸脱して読み耽ってしまっていたのです。やがてそれも全部 読んでしまった事で終りをむかえ、ついに商店街を抜けると今度は見違える様に 急ぎ足となり稚空を慌てさせます。それでも何とか見失う事無く追い続けると、 やがてエリスの姿は桃栗町の外れへと達しました。そこはトキ達の調査で怪しいと 目された地域の一つから少しだけ離れた場所。もっとも、気配という曖昧な物を 元にした推測でしたから、その程度は誤差の範囲であり稚空はこれは当りだと既に 確信していました。その稚空の見つめる先では、造成したものの家を建てずに放置 したと思われる、枯れた雑草生い茂る空き地の中を構わず突き進むエリスの姿が。 そして彼女がフッと姿を消すと間もなく、ふわりと彼の前に降り立った二人の天使 が振り向いて告げます。 「姿が消えました」 「空き地の奥か」 稚空が確認する様に尋ねると、アクセスが応えました。 「正確にはその空き地の先から始まる林だけどな」 「木々が邪魔で上空からはもう見えませんが」 「俺の位置からだと枯れ草の向こうの闇に入った途端に消えて見えたぞ」 「あまり間を空けたくはありませんが、距離を詰めすぎるのもリスクが大きい。 ちょっと待ってから追いましょう」 トキの提案に異論は無く、三人は一分ほど − しかし感覚的には数分以上 − 待って から今度は揃って地上よりの追跡を再会します。空き地の枯れ草には踏み跡があり、 獣道と呼んでも差し支えない細い道が出来上がっていました。町の者が付けた 可能性も無くはありませんでしたが、稚空の知る限りでは地元の者には雑木林に行く 習慣は無いはずでした。どうやら同じ事を考えていたらしいトキが彼に尋ねます。 「稚空さん、人々はこの様な場所に習慣的に通いますか」 「いや。田舎の連中なら行くかも知れないが、町の人間は子供がたまに遊びに入る くらいだと思う。それに親は嫌がる、危ないってな。後は趣味でキノコや山菜とか 探す奴かな。でもまるで時季外れだ」 「しかし、この道は頻繁に使われている形跡があります」 「ああ。間違いなく毎日誰か通ってる」 小声でそんな事を話している間に空き地は終り、三人の前には雑木林が壁の様に 立ちはだかります。積極的に利用される事が無くなった雑木林という物は、特に 周辺部分は藪になっている事が多く、実際彼等の目の前には何者の立ち入りをも 拒む様に然程高くも無い木々の間を更に背の低い植物が埋めていました。ただ 一ヶ所、獣道の続く先を除いて。そのまま進もうとする稚空の肩をトキが掴みます。 「ん?」 「私が先に。もしかしたら侵入者を感知する為の仕掛けがあるかもしれません」 「そうか」 身体を横向きにして道を譲る稚空の前を、経済的サイズに変化したトキとアクセス が通り過ぎます。二人は上下別々の高さをふわふわと進み、どうやら足元と頭上を 分担して探りながら前進している様でした。稚空はその背後から、彼なりの勘を 働かせつつついて行きます。一旦入ってしまうと、外から見る程には雑木林の中は 鬱蒼とはしていませんでした。更に冬場という事もあり葉を落とした木々も多く、 意外に足元は危うくはありません。もっとも、それは単に歩くだけならばという レベルの話。敵の罠といった類の物を相手にする以上、辛うじて見えるという程度 では駄目だと判断した稚空。忘れずに持ってきた自分を内心で褒め称えつつ、暗視 ゴーグルを装着するのでした。 ●桃栗町の外れ・ノインの館 ガサガサという音が廊下から響き、やがてピークに達すると同時にリビングに 通じる扉が開かれました。既に夕食は済み、どうやら後片付けの最中らしく奥の キッチンから水の流れる音と食器が触れ合う音が漏れ聞こえています。 「ただいま戻りました」 エリスがノインに告げ、同じ意味の会釈をミカサに送るのを待ってからノインが 応えます。 「お帰りなさい。で、首尾は」 「ちゃんとエスコートして来ましたよ」 「流石ですね」 「でもホストの準備は全然出来て無い様ですが」 のんびり食後のお茶を飲んでいる様にしか見えない − 実際その通り − の ノインにエリスの非難がましい視線が遠慮なく刺さります。 「その気になれば直ぐ用意出来ますし、先客のお世話を私がするのも問題が」 「本当はやろうとしてアンに追い払われたんでしょ」 「ズルいですね。あなた達そこまで細かい事が離れていても通じるとは 知りませんでしたよ」 「通じてなんかいませんよ。私がノイン様を良く理解しているだけです」 「それは光栄ですね。ですが出来れば誤解の無い、正確な理解をお願いしたい のですが」 「何処か間違っていたら指摘してください。で、アンに追い払われたんでしょ」 「後でエリスと自分でやりますと言われました、穏便に」 「ほらね」 それだけ言うと玉子を冷蔵庫にしまう為にサッサとリビングを出て行ってしまう エリス。言い返す相手に逃げられたノインが何気なく見れば、明らかに笑いを 噛み殺しているミカサが視線を逸らすところでした。 「まったく。何処かに私の真の姿の理解者は居ないのでしょうか」 「…」 「どう思いますか」 「…」 「やけに無口ですね」 「…いえ、その点に関して意見はありませんので」 「…そうですか」 やれやれと本気なのか演技なのか判らない呟きを漏らしつつ、ノインは席を離れ リビングの外へと出て行きました。そしてほんの数分後に戻ると、暇そうな顔で 待っていたエリスに告げました。 「神の御子とツグミ嬢の方、よろしくお願いしますよ」 「了解っ」 背もたれを前にして跨る様に座っていた椅子から勢い良く立ち上がったエリス。 出て行きかけてリビングの扉の前で立ち止まり、ノインに顔を向けました。 「もしお二人のどちらかが途中で目覚めたらどうしますか?」 「よしなに」 ニヤっと笑って今度こそ本当にリビングを出て行ったエリス。もっとも、まろんと ツグミのどちらも目覚めの時には至っておらず、エリスにとっても手伝ったアンに とっても全く手間の掛からない客人であり続けたのでしたが。 その一方で、ノインの許には想定外の客人が訪れていました。もっとも、正確には 客では無く身内なのですが。リビングの扉口に背を預け、何やら含みのありそうな 笑顔をノインとミカサに向けたのは、宿営に戻っていたはずのオットーでした。 「こんばんは」 「はい、こんばんは。何かありましたか」 「こちらにこそ何か、面白そうな事はありませんか」 「さぁ、どうでしょうか」 軽く受け流すノインでしたが、今まで不意に訪問して来た事など無いオットーが わざわざやって来た以上は目的があるのだろうとは気付いていました。勿論、 ミカサもまた同じく感じていましたから二人の会話の進展を興味深く見詰めます。 「実は今夜の歩哨はウチの者なんですが、ちょっと妙な話が入って来ましてね」 「ほうほう、それで何と」 「メイドの嬢ちゃんが夕方出かけたとか」 「使いを頼みましたので」 「玉子を買ってきたとか」 「ええ。明日の朝食に何か玉子料理が出るでしょう。如何です、ご一緒に」 「それも二時間近くかけて、玉子だけ持ち帰ったとか」 「寄り道でもしていたのでしょう」 「私見ですが」 組んでいた腕を解き、人が考えをまとめる時の様に拳で自分の額を軽く叩きながら 先を続けるオットー。 「あの嬢ちゃんは仕事と遊びをきっちり分ける性格と見ます。使いの最中に寄り道 はせんでしょうな」 「確かに、ね」 困った顔に笑顔を薄めて重ねた様な表情で、ノインは感心した口ぶりで応じます。 「どうでしょうかな。邪魔だってんなら引っ込みますが、役に立つ野郎どもの 入り用はありませんか」 「さてはて」 本当に困っている様に表面上は見えるノイン。ここは間に入るべきかとミカサが 思い始めた頃、オットーの背後から話に割り込んだ者がおりました。 「良いじゃないですか参加してもらえば」 それは二人の客人の世話を済ませ戻ってきたエリスでした。オットーに軽く会釈し、 その脇をすり抜けてリビングに入ってくるエリス。直後には同じ様にオットーに 一礼してアンも続いています。 「ちょっと思ったんですけどね、一応ノイン様の屋敷となれば彼等にとっては 敵の本部みたいなもんでしょ?そこに守りの兵団一つも居ないってのは嘘臭い ですよ」 「成る程、一理ありますね」 真面目な顔で大きく二度三度と頷くノインを見て、ミカサは自分の出る幕は無いと 悟ります。こういう反応をする場合、ノインは既に結論を出しているのですから。 しかし、周囲の者がそれと悟っていてもノインの三文芝居はきっちりシナリオ通り に続けられるのでした。 「本当は少数で極秘に進めたかったのですが」 ここぞとばかりに畳み掛けるオットー。 「ご安心を。口の堅い連中が揃っています。悪魔族と違ってね」 言ってしまってから、周囲に悪魔族の者が居ない事を確かめて居なかったなと 気付き内心で少し焦るオットー。もっともその表情には焦りや慌てた様子は一切 現れませんでしたが。 「では、お願いしましょうか」 「喜んで」 「これは本当に極秘の行動です。今宵何があっても明朝には忘れている、口の 堅い者だけを寄越してください」 「規模は」 「先ほどエリスが言った通りに、屋敷の警護に相応しい人数で」 「ふむ、三個分隊ってところですな。他にご要望はありますか」 「折角ですので、なるべく面白い連中を」 口の端を、これ以上は無理というくらい吊り上げてニヤリと笑うオットー。顔の 傷と相まって、迫力満点の笑みです。 「了解」 それだけ答えると、さっと踵を返してドカドカと大股に歩いて出て行ってしまう オットーでした。開きっ放しの扉を近場に居たアンが代わりに閉じ、それを待って いた様にノインが口を開きます。 「エリス、行き帰りに歩哨と出くわしましたか」 「いいえ、誰にも」 「ですが彼の部下があなたを見たと。玉子を買ってきた事まで知ってましたよ」 「じゃ、アレかな」 「あれとは」 「最近、結界の内外に人間界の技術で作った小さな装置を仕掛けてるみたいです。 歩哨の間隔が開き過ぎてるので補う為とか何とか」 「成る程」 「そんな話は聞いていないが」 と言ったのはミカサ。それにノインが応えます。 「とはいえ、細部は任すとは言った様に記憶しています」 「それはまぁ確かに」 だが報告はあってしかるべきだろうに、とは思ったものの仮にも中隊長レベルの 者なのだから判断は尊重しても良いかとミカサは考えを改めます。続くエリスの 台詞を聞くまでの短い間だけでしたが。 「聞いた話ですけど、ああいう小細工はオットー隊長の趣味らしいですよ」 「それはそれは、良い趣味ですね」 「…」 思わぬ同好の士を見つけたと言わんばかりのノインを見て、何処から改革すべきか 途方に暮れるミカサが居ました。 (第175話・つづく) # ドンパチ要員を呼んでみました。 では、また。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■ 可愛いんだから ■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■ いいじゃないか ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■