NHKの監督官庁である総務省がNHKの短波ラジオ国際放送で、「拉致」「テロ」「自然災害」等の報道を重点的に取り扱うようにNHKに対して要請(指示?命令?)した件について、更なる議論と報道を望み投稿します。

 為政者(権力、国)が行政を遂行するために自ら告知する手段が必要であることを否定しません。

 そのような告知手段の一例として印刷物である「官報」があります。
「官報」は「事実」の記載が主な内容であると思われます。

 一方、告知手段としてマスメディア(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ等)が考えられます。
さらに、現在では「インターネット」も出現しています。
少なくとも、わが国では「インターネット」上に誰でも自由に情報をロードすることが可能となっています。
一方、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ等ではそれを運営している特定の機関自身の自由な裁量で情報が発信されています。

 今、問題なのは、この情報発信機関自身の自由な裁量に行政が関与し、制約することの適否であります。
そもそも、主権在民の国家では、行政は国民から委託された権力を行使する場合、「税の使い方」を含めその「権力行使」について常に国民に報告し、国民に監視される本質的属性を付帯していると思います。
この点において、マスメディアは重要な役割を担っていると考えます。すなわち、報道機関は報道の自由(無制限な自由ではなく権力からの自由)という民主主義の基本原理に基づいて、為政者の権力行使の状況を国民に報道するという重要な役割をに担っているのではないでしょうか。したがって、為政者がその権力で報道の自由に関与し、あるいは制約することは「権力の委託」と「権力行使の監視」との関係に関する民主主義の根本的メカニズムに重大な歪みを与えることになります。

 さて、為政者が政策を告知する方法として、国営の放送機関や新聞機関を設置して、国策報道を行う方法があると思われます。
この場合、民間の報道機関との関係はどうなるのでしょうか。この場合、国営報道に対して、民間の報道機関の報道内容が貧弱になるのではないでしょうか。
主権在民の民主主義を維持すべきであることを前提にするならば、報道は為政者自身が恣意的に行うのではなく、むしろ権力と対峙し「権力行使の監視」という役割を担う「報道機関」が権力に対し、時には「応援」し、時には「忠告」し、国内だけではなく、対外的にも「国民の側」に立って、知性と品位を持って「権力の立場」も「国民の立場」も報道すべきではないでしょうか。