安部内閣が、NHKの海外短波放送に対して、拉致問題を重点的に放送するよう命令を出したという。これは、公共放送としての自主権を侵害し、公共放送を政府の御用放送化しようとする非民主的な行為である。
 これを聞いた瞬間に思い出した事案がある。
 かって安部普三と中川昭一が、朝鮮人慰安婦をテ−マにしたNHKの放送企画に注文をつけた事案である。
 この問題は、NHKの放送担当者を呼びつけて企画の修正を指示したとか、そういう事実はなかった、とか争われたが、結局はうやむやのままに終わってしまった。
 今回の「重点放送命令」は、この事案と同様の性質を持つ、いかにも安部がやりそうなことである。
 拉致問題は、安部のそれに対する強硬姿勢が国民的人気を呼び、それが以降の安倍人気の根源になっている事柄でもあって、安部としては、この問題はなおざりには出来ない気持を持っていることは、よく分かる。安倍内閣に「拉致問題担当相を置いたことかららも、その執心ぶりがわかるのである。
 しかし、「既に解決済み」としている北朝鮮の姿勢は変らないであろうし、今回の核実験で、拉致問題の影が薄れたことも事実である。
 安部は、これに焦りを覚えて、何かをやらねばならない、との気持から、NHKへの放送命令を思いついたのであろう。NHKはこのような不当な圧力を断固拒否する気概を示してもらいたい。と同時に、こうして、次第に右傾化の本性を露わにしていく安部の言動には厳しい監視の目を離さぬことが大切である。
 村上新八