米国のいう「不安定の弧」の騒乱はますます激化するばかりである。
 フフガニスタンではタリバンが勢力を回復してきている。アフガン北東部の山岳地帯で米軍がタリバン残党を掃蕩しても、隣国パキスタンの親タリバンから補充されるから、勢力は衰えないのだという。
 イラクではシ-ア派、スンニ派の内戦状態化し、6−8月では前3ヶ月に比べ、テロは15%、それによる死者は51%も増えている、このままでいけば第二のアフガン化は必至であろう。
 レバノンでのイスラエルとヒズボラとの戦闘は休戦が成立、国連軍が監視体制に入ってはいるが、これは双方に戦闘で低下した武力の再整備期間を与えているたげで、再発は必至なのだ。
 先にノドン、テポドン2号の発射実験を行なった北朝鮮は、昨日発表された米国の迎撃ミサイルでの実験成功に反発して、その威力向上に努めると述べた。これで、弾道ミサイルとMDの開発競争が激化し、6者協議などは過去のものになるであろう。
 イランは、イラク、ヒズボラの動きを見ながら、強気に出て、ウラン濃縮続行を決定した。これに対する国連の経済制裁決議はロ中の反対で成立は望めないことは確実だ。このこともイランはとっくに読み込み済みなのだ。
 こうして、不安定の弧の激動は加速されつつあるのである。
 これに対して国連は無力だし、宗教指導者が一肌脱ぐべき問題だと思うが、先日京都で開催された「世界宗教者平和会議」でも和平への努力などの動きは見られなかったのだ。
 武力に頼っても、事態は却って悪化するばかりであることは、はじめから分かりきっていることなのに、米国は武力頼り一辺倒だから、益々問題をこじらせてしまうのだ。
 問題の根本はパレスチナ問題だ。つまり、イスラエルが国連の度重なる決議にも拘わらず、アメリカの後ろ盾を得て、第三次中東戦争で占領したヨルダン川西岸に居座って、大量のパレスチナ難民を発生させたままになっていることが、イスラム過激派にテロの大義を与えているのである。
 だから、この問題を抜本的に解決しなければ、「不安定の弧」はますますテロ脅威の源泉として、世界を脅かし続けるであろう。
 村上新八