この項を締め括るに当たり、再び「米国が北との対話を依怙地になって拒否し
続ける狙いは何か?」に戻らなければならない。
米国が国益・国策上最も恐れるのは、北朝鮮のオモチャなどではない。日本が
日米間の軍事的絆から逃れようとすることである。小泉が訪朝して平壌宣言に
署名したとき、米国の中枢は嫉視と嫉妬とでどんなに腹の虫が煮えくり返った
ことか。米国を差し置いて勝手に国交樹立とは!!  

在日米軍基地の果たす役割は重大で、兵士の訓練から実戦まで、更には日本国
の軍事・経済・民政の実態掌握に至るまで、米国の国際戦略上絶対無二の役割
を果たしていると見る。のみならず、在日米軍基地なしには米国の軍隊そのも
のが有効に機能し難くなっている。日本を失えば、米国は世界を失う、と言っ
ても過言ではない。
米国が日本を失わないようにするにはどうすればよいかは最早明らかであろう。
常に日本の周辺を危機的状況に置き、常に日本が米国に頼らざるを得ない状況
を作り出しておくこと、まさにこれである。幸いにも拉致問題をきっかけに、
日本人は北朝鮮を毛虫よりも毛嫌うようになった。あとは、そうした日本人の
心理を利用すればよい。拉致問題で暖かい胸をサキエあたりに貸せば、日本人
なんていちころなのである。そう思っていた矢先にビッグチャンスが訪れた。

米国の胸の裡を知ってか知らずか、北朝鮮は、日本人の感情を最も傷つけるミ
サイル発射を鮮やかにやってのけてくれたのだ。ロシア近くの海にポチャポチャ
落ちただけで何をそんなに騒ぐのかと思うのだが、日本の防衛庁長官が北朝鮮
を軍事攻撃したいとまで言うほどに日朝関係が悪化した。ブッシュは得意満面、
どんなに胸を撫で下ろしたことか。最後には、国連憲章第七章なんかどうでも
よくなったのである。

「どうすればより多くのものを手に入れることができるか」は米国のゲーム感覚
的国際戦略、北との対話拒否による北のミサイル発射により米国が得たものは概
ね次の通り。
① 北朝鮮の敵性温存  
② 日米共同迎撃ミサイルの開発志向等日米軍事同盟の一層の強化  
③ 在日米軍の再編促進
④ 米軍経費日本側負担の一層の円滑化  
⑤ 日本外交力の矮小化(日本は米国の手先のままでいること)  
⑥ 安保理常任理事国拡大構想の霧散(米国にとって現状のままが利益)
⑦ 日中間の離間(中国との関係も米国がリード)

今後北朝鮮が仮に六者協議に無条件に復帰したとしても、米国は言を左右にし
北との妥協を図る考えはなかろう。金正日の褌の中まで見せろ!と要求を強め
るばかりなのだ。
etc. (以下次回へ)