北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんの夫であった金英男さんとその母、姉との二十数年ぶりの対面が実現した。母は涙、涙の抱擁で息子との対面に喜悦した。その気持はよく分かる。
 その反面、感極まる対面であるはずであるにも拘わらず、金氏の態度は、笑顔は浮かべてはいたが、落ち着いていた。感激のあまり、泣き叫ぶ母をなだめるのに終始している様子であった。北朝鮮からきつく言い含められ、忠実にそれにしたがって行動していたに間違いあるまい。
 「拉致」だとか「苦労した」とか「苦しかった」などと言えば、忽ち強制収用所行きになりかねないからだ。
 母子が対面できたことは喜ばしいが、これも過酷な茶番であった。
 北朝鮮は、金英男さんとキムヘギョンちゃんが父子であるというDNA鑑定結果に抗しきれず、韓国世論や日韓連携しての拉致問題に対する攻勢を受けることになるリスクを考慮して母子の対面を決めると同時に、これで横田めぐみちゃん拉致問題に決着をつけることを意図したものであろう。
 今日、金英男さんの記者会見が行なわれるというが、その場で、めぐみさんの死にも触れることになるのであろう。
すべて北朝鮮の一件落着の筋書きである。これに対して日本政府はどう出るのか。
 村上新八