教育基本法案の審議が衆院の特別委員会で始まった。
 教育基本法改正の最大のポイントは「愛国心」と「公共性」であろう。現行法は昭和23年に制定されたもので、戦前の軍国教育の反省から、個性の尊重や権利の重視に偏っている傾向があったし、この点を是正する必要が感じられたことは確かである。
 しかし、「愛国心」を教育基本法で謳えば済む、という問題ではない。それが分かっているから、現在でも問題視されている国旗や国歌の更なる強制、強化に短絡する可能性は大きいし、その逆効果も含めて大いに警戒すべき問題である。
 国民は誰でも、郷土愛や愛国心の根っこは持っているのだ。それを育てられるかどうかは、「愛するに足りる国」「愛するに値する郷土」であるかどうかなのだ。
 「子どもは親の言うことはきかないが、親のする通りにする」というが、このフレ−ズの「親」を「大人」に変えても同じだと思う。子どもは大人のやっていることを見て真似するのである。大人に「愛国心」や「公共意識」があるのか。あるのはつきつめれば「自利自益意識」だけ「公衆道徳」さえも欠けているのだ。それが今日の教育上の最大の問題点なのだ。
 大人には「カネ」と「セックス」しかない。犯罪人を除いて、悪いことをする職業は官僚と政治家だと、子どもたちが感じている世の中なのだ。そういう環境のなかで、好い子どもを育てるというのは難しい。その意味で、教育基本法とと同時に必要なのは大人向けの「道徳基本法」だと思う。
 村上新八