衆院法務委で「共謀罪」創設の審議が始まる。これは6年前に国連で採択され、日本も署名している「国際組織犯罪防止条例」に対応するための国内法の整備だという。
 犯罪を実行あるいは準備もしないうちに、共謀しただけでも罪に問うという法律は、「思想は罰せず」のこれまでの法理念を覆すものであるだけに、慎重を期さねばなるまい。
 この条約は、テロの恐怖に怯えきった苦肉の産物であり、その気持ちは分からないではないが、実効性はあるのだろうか、と疑問とせざるを得ない。
 テロ組織は、犯行声明などでその存在は分かるが、その構成員は確信犯であるし、誰が構成員になっているかなどは外部からは一切分からない。
 また、彼らは隠密に行動するから、スパイでも潜入させないと、その動きはつかめない。だから共謀がなされたかどうかも分からないはずである。
 実際に共謀の事実は掴めたが、これを取り締まる法律がないために、手が出せないうちに犯行が起きたという事例があるのだろうか。おそらく、極めて稀だと思う。
 とすれば、この法律が制定されても、本来の狙いであるテロや麻薬などの組織犯罪の共謀には適用されるケ−スがなく、それ以外の事例に乱用されることにならないとも限らないのである。
 民主党が提出している修正案のように、「組織的犯罪集団で」「国際的な犯罪を対象とし」「犯罪の具体的な準備をした場合」と限定を厳しくすれば、このような危惧はなくなるが、適用されるケ−スはない、ということになるのではないか。とすれば、単なる気休めだけの法律ということになるのである。
 「共謀罪」は、その狙い通りの実効性の確認という観点から審議を尽くしてもらいたい。
 村上新八