第一話 三方一両損

大統領(以下だ)「あの島にも困ったものだ」
副大統領(以下ふ)「北の国との交渉も山場なのになぜ今問題を起こすんでしょうね」

補佐官(以下ほ)「大統領、これを見てください」
ふ「なになに、まんがむかしばなし おおおかえちぜん?」
だ「昔の裁判官だな?」
ほ「さすが大統領。この中に『三方一両損』というトリックが出ています。わたしはこれ
が使えるのではないかと思うんですが」

だ「ふむふむ。この二人の商人があのふたつの国だな。で、奉行はだれだ」
ふ「それは大統領でしょう」
だ「しかしなあ、この話を応用すると、私が何か損をしないとならないぞ。どっちかの国
にグアムでも渡せというのか」

ほ「いや、そうではありません。このトリックの肝は、仲介者が操作をして偶数にすると
いう点にあります。そこでごにょごにょ」
だ「おお、なるほどそれはいいアイディアだ。さっそく実行しよう」

戦争のときに使い残してあった旧型のスマート爆弾の照準が島に合わされた。
島の形が変わるほど投入された爆弾により、一つだった島が二つに分かれた。

だ(記者会見で)「これで島を半分にわければ争いがなくなる。世界平和のためにわが国
は軍事予算を投入して貢献しました。これをいにしえの知恵で三方一両損といいます」

ふ「だ、大統領、大変です!」
だ「なんだ、ノーベル平和賞でも来たか」
ふ「何をのんきなことを。島を破壊しすぎて、島の条件を満たすサイズを割ってしまいま
した。二つの国から莫大な補償請求が来ています」
だ「何だと、補佐官はどこにいった」
ふ「今朝から行方不明です」
だ「そうか、どうも話ができすぎていると思ったら、これが一両損だったか」

第二話 三方一両得

だ「いや、しかしひどい目にあった。うまい話はのるものじゃないな」
ふ「結局大枚はたいて島を元に戻しましたからね。最近では議会もようやくおさまってき
ました。で、結局あの二つの国はまたもめていると。」
新補佐官(以下し)「大統領、それについては提案があります。これを見てください」
だ「なになに、まんがむかしばなし おおおかえちぜん?」
し「だ、大統領、首をしめないでください。く、苦しい」
ふ「君はこの本のせいでどれだけひどい目にあったかもう忘れたのか?」
し「三方一両損は確かに失敗しました。実はこの本にはもう一つのトリック『三方一両
得』というのが書かれてあるのです。そもそも『三方一両損』は欲のない正直な二人の商
人の事件でした。これよりも欲をかいたふたりの争いである『三方一両得』の解決策の方
がふさわしいのです」

だ「ふむ、で、君はそれをどう応用しようというのかね」
し「例の島を利害関係のない第三者に渡してしまうのです。南米あたりの国がいいのでは
ないでしょうか。おそらく文句もいいません。で、その島がなかったことにして領海線を
決めればいいのです。そうすればそれぞれの国は相手のいいぶんを聞けば損をしていた領
海を手にいれます。われわれは仲介だけして特に軍事費の出費もありません」
だ「なるほど、それはいい。その地球の反対の国ならばトラブルはないだろう。何かあっ
たとしてもその国との問題だ」

だ(記者会見で)「…これにより、わが国は極東の不安定要因をとりのぞくため、この島
の領有権を譲渡し、領海を制定することを提案しました。賢明にも二国に同意していただ
き、調印にたどりつけたのは大変にうれしく思います…」

ふ「た、大変です」
だ「なんだ、ノーベル平和賞でもきたか」
ふ「あなたは、そんなに欲しいんですか。身の程知らずな」
だ「いいから、いったい何だ」
ふ「戦争です」
だ「いったいどうしたことだ」
ふ「あの島ですが、南米の国が債務超過になって 3bay のネットオークションで売りに出
されたのです。落札したのは南の国とも東の国とも中の国ともいわれていますが、はっき
りしません」
だ「なぜだ。北の国は買わなかったのか」
ふ「高すぎたようです。とにかく、オークションが紛糾し、あらしがあったりして最後の
落札者がだれになったかわからなくなったのです。トラフィックの爆発で 3bayのサー
バーがパンクしました。3bay のサーバーがある建物の周囲でログを求めて争奪戦が起き
ています」
だ「そのサーバーはどこにある」
ふ「2ブロック東です」
だ「うちの軍隊はどうした」
ふ「まだあなたの命令がないので動いていません。あまりに事態の展開が早かったので」
だ「よし、では戦略しれいびに、あれあれ、うみゃくしゃべらないあ」
ふ「そうでしょう。実は前の補佐官は東の国のエージェント、新しい補佐官は南の国の
エージェントでした。彼らはあなたに一錠の毒をもっていたのです。彼らは拘束され、す
でに処分されました」
だ「ひゃ、それひゃな、ひゃんでだみゃっていは(そ、それならなんで黙っていた)」
ふ「私も中の国のエージェントだからです。彼らがエージェントで毒をもっていたのは最
近わかったのです。その前に私もあなたに毒をもりました」
だ「ひゃんひょひゃめにゃ(何のためだ)」バタリ

ふ「話の落ちをつけるためだ。
  これが本当の三方一錠毒」

#すまん。