それは私が物心付き始めた頃の事です。
私は人生で初めて、友達の名前を覚えました。
私が人生で最初の友達と思った友達でした。

その時は、それが名前ということも、名前という言葉がある事も知りませんでした。
そして私はテレビのヒーローを見たのです。
そのヒーローは、まさしく友達と同じ名前でした。
私は「名前を呼ぶ」という言葉の使い方を理解したのです。

その時は、既に友達は引越して、私は友達に会う事が出来ませんでした。
親に尋ねても、知らないようでした。
私は1枚だけある友達の写真を時々眺めて時を過ごしました。

そして時は過ぎ、私は小学生になりました。
しかし、夏休みの宿題をやる気にならなくて、自殺を考えました。
その時は、マジンガーZの続きを知りたいと思って、生き延びました。

更に時は過ぎ、銀河鉄道999と機動戦士ガンダムとE.T.とスターウォーズを見た私は映画を作りたいと思いました。
そして、永遠に生きたいと思って、「それは、子供を作らない事です」という答えを得ました。
今に至るまで映画は作れていません。

学校を卒業すると、親と遠く離れて住んでいた私は住むためのアパートを探しました。
都会に出るのに便利なように駅の近くのアパートだけ探しました。
これ以上、都会に近付いても家賃が高くなるだけだろうと思った場所で私はアパートを探すのをやめました。

そこが、恋人の家の近所だったのです。
なんという事でしょう。私の人生の目標は、これだけだったのでしょうか。
なんのためにアルバイトをしながら学校に通ったのか、このためだったのかと思いました。

やがて、私のように成長した男がアパートの私の部屋を尋ねてくれました。
彼の名前を私は知りました。
なんと、彼の名前は、私が人生最初の友達と思った人と同じ名前でした。
しかも、その幼い頃した遊びの記憶も一致していました。

私は、幼い頃の彼が少女と一緒に居た事も覚えていました。
やがて、彼は私を成長した女性に会わせてくれました。
私は彼に、彼女の家族の中の属性を尋ねてみました。
彼女は、彼の家族の一員で、兄弟のようでした。
私は、この人を好きになろうかと思いました。

時は過ぎました。
「それは、子供を作らない事です」
そうだ、私は永遠に生きたいのだ。
彼女と会えるようになっても私は彼女に話掛けませんでした。

やがて、彼女が私に言いました。
「このままでは、私は、求婚してくれた人の名前になる!」
どうやら彼女は他の人からの求婚を断る理由が無かったようです。
「何か、して欲しい事、あるかな」
彼女が、そう言っても、私は答える訳にはいきません。
私が黙っていると、彼女の親が言いました。
「私から、どうですか」
私は、
「彼の幼い時の写真、どこかに持っていたら見せてくれますか」
私は、これが最後だからと思って、彼女の兄弟が私の幼なじみかどうか確かめたいと思いました。

彼女の親は私に、彼の幼い時の写真を見せてくれました。
そこには!
私が幼い頃から時々眺めて時を過ごした写真の、友達と同じ顔があったのです。
それで私は、私の好きな彼女が、私の最初の友達の兄弟であると知りました。

彼女は私に、
「あなたと私の赤ちゃんやって」
と言いました。私は、
「うん、やりたい」
と答えました。彼女は、
「それで」
と言ったので、私は、
「だけど、永遠に生きたいから」
と答えると、彼女は、
「だから」
と尋ね、私が、
「また失恋か」
と泣き真似を見せると、彼女は、
「違う!」
と言って私の腕を引っ張り、
「帰る!」
と言いました。私が、
「腕を洗わない」
と言うと、彼女も、
「手を洗わない!」
と言ってくれました。

時は過ぎ、インターネットで私の名前を見付けたのか、彼女はメールを送ってくれました。
私と彼女は、文通友達になりました。

時は過ぎ、彼女は家に電話を掛けてくれたようです。
親は私に聞きました。
「どうしたい」
私は、
「彼女の兄弟と、自分の幼なじみの最初の友達の名前は同じだった。同じ人だったら、結婚したい」
と答えました。
親は、私の最初の友達と彼女と私が幼なじみである事を確かめてくれました。

これが、今の正しい認識なのかどうか(-_-)