日中韓歴訪のブッシュ大統領は最後の訪問国中国を訪問して、胡錦濤主席、温家宝首相に政治、社会、宗教の民主化を促した。中国経済の発展にとって米国の持つ重要性を背景に民主主義の伝道者を任ずるブッシュ大統領が胡錦濤がNOと言うのを承知で民主化を迫ったものである。
 これに対して胡錦濤は、予想通り「中国はその特性に即した独自の民主化を進めている」とアメリカ流を拒否した民主化を進めていると応じた。
 中国の特性とは、政治面では半世紀以上に及ぶ共産党政権独裁と経済面では資本主義の市場競争原理の導入による経済活性化と高成長率の維持である。
 これは一応は成功したが、反面、内政面では貧富格差、都市部での中流階級の増加、内陸部の貧困層の不満、バブルリスク、長期独裁に伴う通弊である官僚汚職の増大などの不安要素を抱えている。
 また外政面では安すぎる元レ−ト、貿易不均衡、知的所有権問題、WTO問題を抱えている。
 中国政府は、このような将来リスクにどう対応していくかの難しい舵取りを迫られているのである。
 人民の不満が政府に向かわないようにするための方策として、人民の関心を反日に向かわせるとか、太極拳のような健康法であっても、それが全国的に組織化されることを牽制するなども中国政府が人民の動向に神経質になっている証拠なのだ。
 このようなタイミングを捉えて、ブッシュが中国の民主化促したことは時宜を得た外交戦略であると思う。中国の不満層に刺激を与えることになるからである。その答えは北京のオリンピック後に出るのであろう。
 村上新八