中皮腫、肺がんの原因となるアスベストがいたるところで使用されている実態が徐々に明らかにされつつある。
 現段階でも全国の学校、大学施設5万5千施設で使用されていることが判明しているが、気をつけてみていると、体育館や有料駐車施設の天井などに、アスベストがむき出しで吹き付けられている所が至るところにあることが分かる。
 30年以上の潜伏期をおいて癌や悪性腫瘍を発病させるというアスベストの怖さは1960年代には分かっていたというが、行政は対策を取らずに放置していたのだ。
 コストが安く、防音、断熱効果が高いアスベストの材料価値とそれを使用する業界の利益だけを考慮したからに違いない。これは行政の怠慢であると同時に政官業癒着の産物でもあろう。
 政府は、今になって慌てて「石綿新法」案をまとめ、その中で被害者の救済や医療費や療養手当ての支給、遺族に対する一時金の支払いなどを決めているが、これは、救済などというものではなく、行政の怠慢、誤りによる障害致死の犯罪行為に対する「お詫び金」なのである。
 しかし、その被害はどのくらい拡大するかは分からないのである。それはおそらくHIVの被害とは比較にならぬ規模の拡大を示すのであろう。
 「お詫び金」くらいで済む問題ではないのだ。
 村上新八