二院制
(1)日本国憲法に拠れば、
第41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
第42条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第59条第一項 法律案は、、、両議院で可決したとき法律となる。
とあり、この衆参両議院の性格や強弱を「一般的に」述べる規定は見当たらな
い。では、憲法は議員の任期等は別にすれば同等、等質の議院として見立ててい
るのだろうか?politicsで議論に参加している方々はどういう考えに立つにせ
よ、自己の考えを、具体的な場合に関連付けられる程度には熟知し、その上でこ
とを論じているのかが甚だ曖昧な場合があるような気がする。
わたくしは、比較法や外国法制度からアプリオリに、二院制とは云々、とするや
り方は採らないゆえに、結局は日本国憲法の規定から窺い知ることのみを問題に
とすることになる。勿論、個々の規定の「理由を尋ねる過程で」理念を抽出する
ことはあってしかるべき、という立場に立つ。両議院の差異を見てみよう。
第45条46条で任期が異なることを明記する以外は殆ど差異は無し。第43条では議
員は全国民を代表する選挙された議員と言う点で差異は無し。第44条では議員と
選挙人の資格は法律事項としている点で差異は無し。他もほぼ同様。ただし、59
条60条61条で、法律案の議決、予算の議決、条約の承認の議決については衆議院
の優越を規定する。
(2)さて、以上から、その他の論理的思考も加えて、衆議院と参議院はいかな
る性格と役割を持つものと憲法は予定したのでありましょうか?憲法は代41条で
国の唯一の立法機関であるといっていることに焦点をあわせて考えるべきことで
あって、予算案や条約の承認もほぼ同様の性質を帯びるものである。予算に関し
ても今後は国民が監視するという点を強調すべきだと考える。ところが、その国
会の本質的任務において衆議院が優越することを憲法が明記しているということ
は、国会の意思の代弁は衆議院が行なうとしてよろしいということではあるまい
か。その関係での参議院の役割は衆議院に安易な考えをさせないこと。この根拠
は憲法から窺い知れることではない。それよりももっと以前の憲法さえもが当然
視しなければならないこと、即ち、社会通念上は、二以上の議決の一致を見ると
すれば、少なくとも一つのみの議決で成立する場合よりはより慎重な結果となる
とする自明の考えがその根底にある。
つまり、参議院は極言すれば国会の意思形成をする役割を持つのではなく、衆議
院の安易な判断に反省を促す役割をもつに過ぎない、と位置付けることになる。
衆議院こそが国会の意思を代弁するもの、これが憲法の考え方ではないか。
(3)憲法第69条はその趣旨を受けて、「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可
決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議員が解散されない限
り、総辞職しなければならない。」と規定した。
このたび衆議院が解散され総選挙となったわけであるが、内閣は憲法の趣旨を踏
まえる限りは、参議院での郵政民営化法案の否決即解散総選挙は誤りであったと
思う。これでは、参議院からの<慎重さ>の要求を満たすことにはならず、その
意味では小泉内閣は憲法の脱法行為を犯したといえよう。
少なくとも、解釈論的には、内閣提出法案に関する限りは、衆議院信任且つ参議
院不信任の場合は内閣に解散権を認めない、とすべきではいか。理由は、内閣の
法案提出権も衆議院信任且つ参議院不信任による解散権も、憲法が「本来的に」
予定したものではない、と言う点にその理由を見出すことができるのではないか。
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太宰 真@URAWA
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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