国旗は国家を象徴する標識である。
 それはどういう意味を持つものであろうか。国旗が愛国心高揚の機能を持つものであろうか。
 海外旅行などで異国の旅先で、たまたま掲げられていた日の丸の旗を見れば懐かしさを感じる。それは日本人としてのアイデンティティをあらためて想起させるからであろう。が、それは愛国心というものではない。    国旗を見て愛国心を奮い起こされるのは戦場の場くらいではないか。敵を目前にして、自国を勝利させたいという愛国心を彷彿させるからであろう。
 国旗を見て愛国心が沸き起こるのはそのくらいである。普段は愛国心と国旗は無関係なのだ。
 それでは、国旗の機能とは何なのか。
 アメリカに行くと、到る所に星条旗が掲げられている。これはアメリカが他民族の坩堝であるがゆえに、常に国民の統合を維持することが必要だから、そのための媒介ツ−ルとしての国旗をやたらと掲げるのであろう。星条旗イコ−ルアメリカの統合なのである。
 統合とは、国民の考え方のベクトルを一つの焦点に向かわせることではなくて、国家という名のもとに結集させようとするものである。いろいろな考え方があって議論を戦わせることは結構だが、それを、一定のル−ルのもとに、最終的に一つに決めて政府の権力で実行に移そうとする。国旗はそのような国家権力、政治権力の象徴なのである。
 アメリカで最近国旗が一段と増えたのは9.11の同時多発テロからイラクへの武力行使と戦争終結宣言までの間であった。これは、これは同時多発テロに直面して、テロとの戦いに国民意識が高揚した、という臨戦意識の高まりによるものであったと思う。それは米国政府の期待に沿うものであった。
 日本でも、国旗が国中にあふれたのは、戦争中であった。これは国家権力の主導のもとに、総力を結集して戦争を遂行させる必要からも国旗掲揚を強制したからである。
 このように国旗は、愛国心の高揚ではなく、国家権力への敬意と忠誠を高揚させるために利用されることが多いのである。
 村上新八