Re: 台風の渦はコリオリの力による?
石原@ザ・ランスです。
( fj.sci.geo には行ってるのに、なんでこっちに来てないかな?
再送します)
In article <dc59b0$etp$1@news.jaipa.or.jp>, kenji@nasuinfo.or.jp says...
>
>教科書には、台風の渦はコリオリの力によってできると書いて有ります。でも私は違うと
>考えます。台風の渦ができるの、コリオリの力ではなく角運動量のせいだと主張します。
>
>コリオリの力なんて弱いものです。東京の緯度で、1 ton の車が磁束 150Km で走って、
>やっと 3 newton の力が加わるだけです。圧力勾配が少し変形することはあっても、衛星
>写真でみるような渦の形になるとは思えません。
まず、風の原因をどのように考えるかというと、
「気圧傾度力」があって、それと「コリオリの力」とが釣り合うと考えます。
これを「地衡風」と呼びます。
台風の中心付近では、さらに遠心力も考える。これを「傾度風」と呼びますが、
ともかく、「気圧傾度力」などとの比較で考えないと「コリオリの力なんて弱い」
かどうかは何とも言えないわけです。
で、実際にはこの「地衡風」という近似はかなり良い精度で成り立っています。
つまり、「気圧傾度力」と「コリオリの力」との釣り合い条件から、
風速と風向が同時に決まる。ここまでは確実に言えることです。
角運動量との関係は、戸田さんが厳密に解説して下さってますが、
そういう意味でならともかく、
小林さんの web ページのような考え方なら、全く見当違いですね。
>それ以前に、現実の台風はレコード盤のように薄っぺらです。台風の厚さと半径の比は
>1/80 程度だそうです。このような薄っぺらな円板の下側と上側で、反対方向の空気の流
>れが発生しています。ですから加わるコリオリの力も下側と上側で逆方向になるはずです。
>コリオリの力で台風の渦ができるとしたならば下側と上側で渦の形が反対になるはずです。
>そのような台風の衛星写真はありません。
これは面白いところに目を付けられた。
だけど、天気図でも衛星写真でも、一般の人が見るのは「地上」のものだけでしょう。
他に「高層天気図」なんてのもあります。冬になると、天気予報で
「上空5000m付近に-30度の寒気」なんて言ってる、そのモトになるものです。
先ほど「地衡風」近似が良い精度で成り立つと言いましたが、
実は、地表付近では障害物や摩擦の影響で、「地衡風」近似からはだいぶずれる。
むしろ上空(1500m以上)で、地衡風近似が良く成り立つのですが、
これは高層天気図を見ればすぐわかることです。
台風の上空では、地表の中心の真上が中心じゃなくて、位置がだいぶずれますが、
その高度において地衡風」近似が成り立っている、つまりコリオリの力が働いている
ということです。
そして、戸田さん曰く
>「下側と上側で渦の形が反対になる」という結論は同じになるハズですよ。
>同じにならなかったら、どこかで計算を間違えている。
計算したことはないけど、(物理学を信じるなら)各層で全部足したら、そのはずですね。
あ、気象庁からは上層の渦度分布図なんかも出てるはずだ。
衛星写真も、赤外画像で上空の雲を見れば、地表の渦とは全然違うのはわかります。
>一方で現在の気象予測はスーパーコンピュータでシミュレーション計算しているのですか
>ら、台風の渦がコリオリ力によるものではないていどのことは専門家は分かっているはず
>だと思います。でも台風の渦がコリオリ力よってできるとする強化者や web ページばか
>りです。fj.sci.pyshics の皆様は、どのようにお考えでしょうか?
ということで、シミュレーションモデルからコリオリ項を外したらとんでもない
結果にしかならないでしょう。
そりゃあ、「角運動量」で捉えることもできるだろうけど、最終的に計算する
運動方程式は同じことになるはず。
運動方程式を導くためなら、角運動量から考えるのも良いだろうけど、
運動方程式は既に確立してるからなあ・・
--
石原 幸男
<Yukio Ishihara of theR.A.N.S.>
ishihara@y.email.ne.jp
http://www.nn.iij4u.or.jp/~therans/
黍粥は塩に椰子油にサザエ・イソノ祝う隣で虚仮にするまで(詠み人しらず)
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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