宗教とは、人間の力が及ばない事柄をコントロ−ルしようととして、超自然的、超人間的な力を持つものとして「神」を想定し、これを信仰する形式(祈り、経典、聖堂、組織など)である。
 それは次ぎのような人間生活にプラスとマイナスの面を持っている。
1プラシ−ボ効果
 神は存在しないのだから、祈りや願いは 効くわけはないが、プラシ−ボ(偽薬)と同じで、それを信じて疑わない者にとっては、心が休まる、心強い、何か救われた感じになる等という精神安定剤的効果はあるであろう。
2最高の道徳提示効果
 法が最低の道徳とすれば、宗教の説く道徳は最高水準の道徳である。キリスト教では、心のなかで姦淫を想像するだけても罪だとしているなどはその典型例と言えよう。
仏教の「六波羅蜜」や「五戒」「七慢」なども一般人には困難な道徳である。これか、カントの言う「定言的命法」つまり、行為の結果や目的に関係なく、普遍的妥当性を持つものとしてやらねばならぬものだ。
 こういう最高の道徳を守らせるために、その監視役の神が要るのである。神はすべてを見通すことができることになっていて、隠し立ては出来ないからである。また、「地獄、極楽」や「輪廻転生」のアメとムチも道徳遵守の推進役である。
 しかし、これにはイスラム過激派の自爆テロに駆り立てたりするマイナス効果もある。 


3信仰者の信用付与効果
 世の中には「信心深い人」「篤信家」は、それだけで頭から人間的に信用される風習がある。信仰を持つ人は、その宗教が教える高度の道徳を実行している人、つまり「有徳の人」だと看做されるからであろう。
 オウム真理教が坂本弁護士一家を殺害した事件で、現場に犯人が落した「プルシャ」(オウムのバッジ)があったにもかかわらず、宗教者が殺人なんてやるはずがないと頭から信じ込んだために、摘発が遅れて、犯罪を拡大させた結果になったのもこの例である。
 これが詐欺師や悪人の仮面にも利用されるからマイナス効果の面もあるのである。
4文化的アクセサリ-
 国の内外を問わず観光旅行というと、大聖堂や神社、仏閣等の宗教施設と城館、宮殿が観光ポイントの大半を占めることになる。なかでも圧倒的な比率を占めるのが宗教施設である。数が多いからである。
 そのくらい宗教施設の文化的アクセサリ−としての価値は大きいのである。
 このように、宗教は人間性に内在する要求に起因するものとして認識せざるを得ないのである。
 村上新八