畑です。

先日、アイザック・アシモフの初期のロボットもの短編集『われはロボット』を
読みました。

ハヤカワ文庫SFでは、小尾芙佐・訳で1983年に出版されているのですが、一番最
後のエピソード『災厄のとき(The Evitable Conflict)』で、

「ワールド・スチール社は二万大トンの過剰生産を報告している」

という文章を見つけました。──「二万大トン」とはなんぞや?

原文が確認できないので断定はできないのですが、「ギガトン」という単位を誤
訳したのではないかと思われます。「ギガ」を直訳して「大」と……。

まあ、文系(この方は津田塾大学英文科卒だそうです)の翻訳家だと致し方ない
のかも知れません。それもこの時代だと、パソコンとかも普及しておらず、ギガ
という単位も一般的ではなかったでしょうし。

「ワールド・スチール社は二十兆トンの過剰生産を報告している」

ではないのかと推測します。

ところが、近年(2004年)に早川からこの本が『われはロボット〔決定版〕』と
してリニューアルされて出ているのですが、訳文そのものは基本的に同じで、解
説が瀬名秀明のものに置き換えられているというおまけ部分だけいじっている程
度という点は、まあ新版のご多分に漏れないといったところです。

ところが、訳文がわずかに改変を受けています。巻末に編集部のコメントとして
旧版の訳文に手を加えて決定版とした、という旨の断り書きがありますが、上の
例の誤訳文に関して

「ワールド・スチール社はほぼ二万トンの過剰生産を報告している」

となっていました。「大」を「ほぼ(=大雑把に言って)」の間違いとみなして
修正しているようですが、「二十兆」を「ほぼ二万」に改変したことになってい
たとするとと、果して「決定版」と銘打つに相応しい修正だったのかどうか……。

# 原文が知りたいものです。アメリカ在住の方とかで、図書館が利用可能な方、
# 宜しければご協力をお願いします。;)

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Masanori HATA