憎んでも憎み足らないテロがロンドンで発生した。地下鉄数箇所とバスでの同時多発テロである。
 通勤時間帯のラッシュを狙ったのは昨年3月に発生したスペインの首都マドリッドのテロと同じ手口である。マドリッドでの死者は167名に達したが、今回もかなりの死傷者が出るものとみられている。
 真偽のほどは分からないが、「欧州聖戦アルカイダ組織」と名乗って、ウエブサイトに「英政府がアフガニスタン、イラクで起こした大量殺人に報復する時がきた。ロンドンで攻撃を実行した」との犯行声明が出た。その手口から見てもアルカイダの犯行であることは間違いあるまい。
 G8サミットの議長としてスコットランドのグレンイ-グルに滞在していたブレア首相は「このテロはサミットを狙ったものだ」と述べたが、それにしては距離が離れ過ぎている。そうではなくて、サミット期間中にやるのが効果的と読んだ犯行だと思う。
 サミット出席中の各国首脳は異口同音に「テロに屈せず」「断固戦う」と述べてはいるが、相手も見えず、交渉すべき相手もわからず、忍者のようなテロは先制攻撃の仕様もない。無理にやればアメリカで問題視されている、イスラム教徒を片っ端から拘束するような人権侵害にもなりかねないのである。
 マドリッドのテロ、今回のロンドンのテロの教訓は、以下に強大な軍事力でも警察力でもテロを完全に防ぐことは出来ないということである。この前提に立って、テロに屈することなく、彼らに「聖戦」をやめさせるための武力によらない解決法を、世界の知恵を傾けて模索しなければならないということである。それは日本にとっても他人ごとではないのである。
 村上新八