完全を求める人間の幻想「イデア」
プラトンは、霊魂二元論で、霊魂を理性的と非理性的の二つの部分に区別し、前者の肉体からの分離独立とその不滅性を説いた。そして肉体の道具である感官で感知したこの世の個物は、消滅変化するものだから、真の実在ではなく、真に不滅の実在は、普遍的なものであり、それは霊魂の目(理性)でのみ思考されるものとした。この純粋思考の対象が「イデア」であり、感官で感知される経験的個物の世界は「イデア」の模造であると考えた。カントの「物自体」という概念もこれを受け継いだものである。ただし、カントはこれは人間の理性でも感知しえないものとした。
しかし、科学技術の発展を待つまでもなく、このような「イデア」や「物自体」は世界と人間にとってどうでもよいことなのだ。あってもなくても全く関係のないことだからだ。哲学者が、これに拘ったのは、その当時の未解明なことが多く、間違いの多い世界で、何か完全なもの、絶対的なものを想定したいという願望に基づいて幻想したまでのことなのだ。それは人間が神を幻想したの軌を一にするものであると思う。
村上新八
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