絶対的観念論者であるヘ−ゲルは、我々が直接的に知る事物は絶対的イデ−のうちにその根拠を持っており、それ自身現象に他ならないとして絶対的イデ−論を唱えた。つまり絶対的に正しいものなど経験的世界では見出せないものだがイデ−は時空を超えた非物体的な永遠の実在であり、感覚的な世界の個物はイデ−を原型とする模造だというのである。
 ヘ−ゲルのイデ−は、絶対的実在として論理的イデ−、自然、精神の3つの段階を通じて弁証法的に自己展開するが、これは神のうちにある現実世界の原型であると説く。
 また、ヘ−ゲルは、本質を持たない仮象はない。真の現実性は可能性や偶然性とは反対に、必然的、合理的な存在である。
現実的なものはすべて合理的であり、合理的なものはすべて現実的である、とも言っている。
 この考え方は神の存在にも適用され、カントが否定した「神の存在についての本体論的証明」を擁護している。つまり、神の存在は感覚による確証として認知されるものではないが、本体論敵証明が表わす確信に基づいて完全なものがないはずはないという本質の法則にしたがえば、神はあるのだ、と反論している。