波止場の哲学者として知られるエリック・ホッファのアフォリズム
を集めた本「魂の錬金術」(作品社)を旅行鞄に入れてきた.いま
1週間の会議が終わった夜,ホテルの部屋でページをめくっている.

この本は,「情熱的な精神状態」と「人間の条件について」の2部
から成っているが,後者はかれの遺著「竜と悪魔のはざまで」から
の抜粋である.この書物については,以前ソフトウェアの設計につ
いての共同研究に参加していたとき,参考にしようとして,当時す
でに絶版で入手不可能だった原書をサンフランシスコ公立図書館で
みつけて,25セント硬貨を山のように用意して何十ページか備え
付けのゼロックスマシンでコピーしたなつかしい思い出がある.

その第88アフォリズムには,こう書かれている:

 − 空っぽの頭は,実際は空ではない.ゴミで一杯になっている
   のだ.空っぽの頭に何かを詰め込むのがむずかしいのは,こ
   のためである.

T.S.エリオットの有名な詩句:

 − わたしたちが知識の山のなかに失った知恵は,いったいどこ
   へ行ってしまったのだろうか?

の「知識(Knowledge)」を「ゴミ(Garbage)」と読みかえれば同じ
意味になるだろう.

「いまの時代に詩がないのではなく,われわれの周囲は悪い詩で一
杯なのだ」と,かつて鮎川信夫が指摘した状況は,たとえばネット
上の「詩の掲示板」とかを眺めてみると,現在も変っていないよう
に感じられる.

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        Kiss cedar, Call witch!
        Now staying Busan, Korea