萩原さん wrote...
Message-ID: <2s18ovF17gc2nU1@uni-berlin.de>
> ユダヤ人弾圧とゲルマン民族の浄化は政権獲得時の選挙公約だった
> んでしょうか 

そもそもですね、反ユダヤ主義とゲルマン民族優越主義を生み出した
のはドイツ労働者党でも、ましてやヒトラーでもありません。

19世紀後期、オーストリア−ハンガリー帝国のキリスト教社会党の指
導者であるゲオルク・フォン・シェーネラーとカール・ルエガーが元
祖です。彼らによってゲルマン系の大衆に徐々に広く深く浸透して行
きました。そしてもちろんヒトラーもその例外ではないです。

# 村瀬興雄：著『アドルフ・ヒトラー』中公新書：刊より引用
| たとえば1889年にルエガーはつぎのようにいっている。「自由経済
| という残虐な競争のもとでは、裕福なユダヤ人だけが勝利を収める。
| それゆえに貪欲な資本主義からキリスト教人民を保護しなければな
| らない。反ユダヤ主義とは……圧迫されたキリスト教人民が教会と
| 国家に対して救いを求める叫びである。」

すなわち、ヒトラーが世に出るより先に反ユダヤ主義とゲルマン民族
優越主義は存在しており、ドイツ労働者党――ナチス・国家社会主義
ドイツ労働者党の前身――はヒトラーが入党する以前から堂々と党是
にして民衆の支持を得ていました。ヒトラーはただ単に彼のカリスマ
性によってそれを決定的に拡大させたに過ぎません。

なんかドイツ人が過去の歴史について反省しているか否かの議論が続
いているようですが、それについて私の考えを述べるのは止めておき
ます。ただ、大不況と失業と貧困と労働運動と宗教と民族主義が最悪
の形で重なった結果がナチス・ドイツであり、その原因、すなわちゲ
ルマン人をそのように追い込んだのは当のゲルマン人だけではないと
いうことは思想の左右を問わず多くの人に理解して欲しいです。

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中本徹也 (NAKAMOTO Tetsuya) @ HACHIOUJI City, TOKYO.
tetsuzou@pop02.odn.ne.jp