SisterPrincess Yotsuba OriginalStory
兄チャマ! ごきげんようデス!
四葉、兄チャマに会いたくて遊びに来ちゃいマシタ。
だって今日は……クフフッ(はぁと)
ここで兄チャマにクイズです!
今日はとってもとっても大切な日です。何の日でしょうか?
日本でGIFライセンスの期限が切れたのは昨日だから違いマスよ。
分からないデスか? しょうがナイですね。
ヒントは「イギリス」と「誕生日」です。
ええっ? 兄チャマ、このヒントだけで分かったデスか?
さすがは兄チャマ。それでこそ怪盗クローバーのライバルです。
兄チャマの推理通り、今日はイギリスのウィリアム王子の誕生日デス!
ごめんなさい。猫間です。
最近寂しい j.a.p を盛り上げてみよう作戦その2。
以前に話題にしたシスタープリンセス四葉SSを投稿します。
こういった二次創作がお嫌いでなければお楽しみ下さい。
それでは、どうぞ。
●SisterPrincess Yotsuba OriginalStory「6月21日」
6月21日。
それは1年にたった1度だけの大切な日。
そうです! 今日は四葉のバースデイなのです!
しかも、今年はただのバースデイじゃありません。
なんとなんとなんと、兄チャマが四葉のバースデイをお祝いしてくれるのデス!
3時から兄チャマの家で四葉のバースデイ・パーティー! キャッホー!
可憐ちゃんや咲耶ちゃんも、みんな来てくれるって言ってました。
楽しいパーティーになりそうです。
だから、3時までなんて待ちきれないです。
待ちきれなくて待ちきれなくて、四葉、1時間も早く兄チャマの家に着いちゃいマシタ。
兄チャマは、もうパーティーの準備を始めているのかな?
それとも、まだのんびりしてるのかな?
ひょっとしたらひょっとして、四葉のバースデイのこと忘れてたりして……。
もし兄チャマに忘れられてたら、四葉、しょぼんデス……。
……こうなったら、兄チャマが四葉のこと忘れていないかチェキしちゃいマス!
兄チャマ、覚悟するデスよ! クフフフゥ(はぁと)
兄チャマのおうちに着いた四葉は、玄関の前を横切ってお庭の方へ行きました。
兄チャマのおうちでパーティーをするのなら、お庭が見える広いリビングに違いありま
せん。
忍び足でリビングの窓に近づいて……はっ!
「直接顔を出したら見つかってしまいます。こういうときは」
四葉、壁に隠れて、いつも持ち歩いているコンパクトを開きました(コンパクトは
レディのたしなみデス!)。
そして、コンパクトの鏡を使ってリビングの様子をうかがいます。
こうやって鏡を使えばピストルで狙われていても大丈夫なのです。
「クフフフッ(はぁと) 兄チャマ、いるデスね」
兄チャマがリビングの飾り付けをしている姿が鏡に映りました。
飾りには『イデスーバーピッハ』……じゃなくて、『ハッピーバースデイ』って書いて
あります。
やっぱりパーティー会場はリビングでした。名探偵・四葉の推理は正しかったのです!
兄チャマの他には、もう誰か来ているのかな?
そう思って鏡を傾けると、今度は花穂ちゃんが映りました。お花を飾っています。
「きゃあっ!」
あっ。花瓶を倒しちゃいました。
花穂ちゃんは相変わらずドジっ子デスね。
鞠絵ちゃんがやってきて一緒にお片付けを始めました。
その向こうでは春歌ちゃんが和紙を使った飾りを作っています。
鈴凛ちゃんは何かの細いコードを取り付けています。
千影ちゃんは……どうして部屋中に聖書の切れ端を貼り付けているデスか?
コラージュなのかな?
「あーっ! 四葉ちゃんだー!」
ぎくぅっ! 見付かっちゃったデスか!?
振り返ると、雛子ちゃんと衛ちゃんがいました。
雛子ちゃんはミカエルの背中に乗っています。
衛ちゃんとミカエルで雛子ちゃんの子守をしていたんデスね。
「四葉ちゃん、こんなところで何してるの?」
「えっと、実はデスね、待ちきれなくて早く来てしまったのです」
「そうなんだ。ボクも誕生日のときは朝からソワソワしちゃうから、その気持ち
分かるよ」
「衛ちゃんもデスか? ちょっと安心しましたデス」
四葉、落ち着きがないって良く言われるケド、1年に1度のバースデイくらいは仕方
ないですよね。
「ほらほら。四葉ちゃんもいっしょにお誕生日会の準備しようよ、ね」
「あっ、雛子ちゃん、急に引っ張らないでほしいのデス」
「早く早く。こっちだよ」
「しょうがないデスね」
四葉、雛子ちゃんに連れられて兄チャマのおうちにおじゃましました。
「おにいたまー、四葉ちゃんが来たよ」
「えっ? 四葉ちゃんが?」
「こんにちはデス、兄チャマ」
四葉がリビングに顔を出したら、兄チャマはやっぱりビックリしたみたいです。
花穂ちゃんや他のみんなも驚いています。
「四葉ちゃん、どうしたの? まだパーティー、始まらないよ」
「ちょっと早く着いちゃったのです。四葉もパーティーの準備を手伝いマスよ」
四葉、腕まくりしながら花穂ちゃんに応えました。
でも、花穂ちゃんは首を振って言いました。
「ありがとう、四葉ちゃん。でもね、飾り付けはもうほとんど終わっちゃったの」
「ですから、四葉ちゃんはこちらで休んでいて下さいね」
鞠絵ちゃんがソファーで手招きしました。
「そんなー。何もしないで3時までなんて待ちきれないデスよ」
「ウフフッ。四葉ちゃんは本当に元気いっぱいですわね」
四葉がしょんぼりしたら春歌ちゃんに笑われちゃいました。
「それじゃあ、もうパーティー始めちゃおうか。そうしようよ、あにぃ」
「うーん、困ったな。まだ料理の用意ができていないし、それに、亞里亞ちゃんも
来ていないんだよ」
兄チャマが衛ちゃんに言いました。リビングにいるのは四葉と兄チャマ、花穂ちゃん、
鞠絵ちゃん、春歌ちゃん、鈴凛ちゃん、千影ちゃん、それに、雛子ちゃんと衛ちゃん
です。ミカエルはお庭にいるけど亞里亞ちゃんはいません。
「亞里亞ちゃんは本当にのんびり屋さんね」
キッチンからクスクス笑いながら歩いてきたのは可憐ちゃんです。
咲耶ちゃんと白雪ちゃんもやってきます。
「こっちはケーキが焼きあがるのを待つだけよ」
「美味し過ぎてほっぺたが落ちちゃうから覚悟するんですのっ」
自信たっぷりに言った白雪ちゃんのほっぺにはクリームが付いています。
可憐ちゃんが教えてあげたら慌ててキッチンに戻っていきました。
「きゃーっ! 姫、にいさまの前で恥ずかしいですのっ!」
「クフフッ。白雪ちゃんも意外とそそっかしいデスね」
白雪ちゃんの慌てぶりがおかしくて、四葉、みんなと一緒に笑ってしまいました。
そのとき、お部屋の外から「パカパカ」という音が聞こえてきました。
振り向くと、お庭の向こうにある道路を馬車がゆっくり進んで来るのが見えます。
本物のお馬さんが引いている本物の馬車です。
「……四葉、あれに亞里亞ちゃんが乗っている気がします」
四葉の推理は、またまた的中しちゃいマシタ。
「では後ほどお迎えに伺います。それまで亞里亞さまをお願いします」
「はい。大切にお預かりしますよ、じいやさん」
「じいや〜、またね〜」
亞里亞ちゃんを連れてきたじいやさんは兄チャマに挨拶して帰っていきました。
亞里亞ちゃんのお世話をしているメイドさんは女の人なのに「じいや」なのです。
「これで全員そろいマシタね」
「ああ…………。これで13人。イエスを囲む十二使徒が揃ったようだね」
千影ちゃん、それは最後の晩餐デス……。
「数秘学によると、12という数は完全を意味し、それに1を加えた13は完全性の
崩壊を示す。実に興味深いことだよ。フフフ…………」
怖いから千影ちゃんはそっとしておきます。
「では、予定より早いですけれど、パーティーを始めましょうか」
「そうだね。始めよう」
「それじゃ、スイッチ・オン!」
春歌ちゃんに兄チャマがうなずいて、鈴凛ちゃんがリモコンのボタンを押します。
ボン!
遠くで何かが爆発したような気がしました。
「ごめんごめん。今のはメカ鈴凛零号機の自爆装置だった。あはは」
「こちらのリモコンですね」
鞠絵ちゃんがテーブルの上にあったリモコンのスイッチを押すと、リビングの周りが
クリスマスの飾りみたいにピカピカ光りました。どこからか音楽も聞こえてきます。
「姫特製、ブルーベリージャム入りカマンベールチーズフライですのっ! にいさま
にも大好評の自信作ですの」
白雪ちゃんと咲耶ちゃんがパーティー料理を運んできました。
「こっちはババロアよ」
「ケーキも焼けたから、すぐに切り分けるわね」
可憐ちゃんが持っているのはチョコレートケーキです。
それを見て一番喜んだのは雛子ちゃんでした。
「うわーい! おいしそうだね、おにいたま」
「そうだね。でも、その前に」
「あっ。そっか」
兄チャマの合図で雛子ちゃんや他のみんなが四葉の前に並びました。そして……。
「四葉ちゃん、お誕生日おめでとう」
「あ……ありがとうデス!!」
四葉、こんなに嬉しいバースデイ、初めてかも!
四葉のバースデイ・パーティーが始まりました。
ケーキやお料理は本当にほっぺが落ちそうなくらいおいしいデス。
そして、亞里亞ちゃんがお誕生日の歌を歌ったり、千影ちゃんがタロットで占って
くれたり、兄チャマたちとゲームをしたり、とってもとっても楽しいです!
「そうだ。プレゼントを忘れるところだったよ」
ゲームに負けて雛子ちゃんのお馬さんになっていた兄チャマが言いました。
「四葉のバースデイ・プレゼントですか?」
「もちろんだよ。今日の主役は四葉ちゃんだからね。みんなもプレゼントを用意して
いるんだよ」
「キャッホーッ! どんなプレゼントか楽しみなのデス!」
「それじゃあ、最初は可憐からね」
「ハッピー・バースデイ、四葉ちゃん。可憐からのバースデイ・プレゼントよ」
可憐ちゃんのプレゼントはお人形でした。可愛い女の子の姿をしたぬいぐるみです。
というか、これは四葉にそっくりなのデス。
「これ、四葉のお人形……もしかして可憐ちゃんの手作りデスか?」
四葉が聞いたら可憐ちゃんはうなずきました。
「気に入ってもらえたかしら?」
「はいデス!」
こうして自分のお人形を見てみると、四葉はやっぱりカワイイですね。
クフフッ(はぁと)
「あのね、花穂ね、四つ葉のクローバーを見付けたの!」
花穂ちゃんが差し出したのは、古代ケルトからの幸運のお守り、四つ葉のクローバーでした。
ラミネート加工してカードみたいにしてあります。
「最初は押し花みたいにしようと思って本に挟んでおいたんだけど、最後にラミネーターで
挟んでみたの。こうすれば押し花より長持ちするかな、って」
「それはグッドアイデアです! 花穂ちゃん、ありがとうです」
「えへへ」
「これなら持ち歩いていてもボロボロにならないデスね。カード入れに入れておきます」
「ボクからは、これ」
衛ちゃんが恥ずかしそうに出したのは、オーデコロンでした。
コロンをプレゼントするなんて衛ちゃんっぽくないかも?
と思ったけど、コロンの香りをかいだら、そんな気持ちはすっかり消えちゃいました。
「うわー。イイ匂いなのですー」
柑橘系の爽やかな香りです。こういう香りだったら衛ちゃんらしい感じがします。
「そ、そう? ボク、こういうのって良く分からないから心配だったんだ。
気に入ってくれた?」
「とってもとーっても気に入りました! さっそく使わせてもらうデスよ」
「私からのプレゼントはこれよ。フフッ」
咲耶ちゃんがウィンクしながら差し出したのは白い紙袋でした。紙袋には、ベティーズに
ある高級ブティックのロゴが入っています。
「開けてもいいデスか?」
「ええっ!?」
四葉が聞いたら、咲耶ちゃんは兄チャマの方をチラチラ見たりして、急にソワソワし
始めました。
「そ、それは、その、えーと、ちょっと待って、そう、中身は家に帰ってからのお楽しみ
にしてもらえるかしら」
「もう開けちゃったのデス」
四葉、咲耶ちゃんが慌てているうちに紙袋を開けちゃいマシタ。
それを見た咲耶ちゃんは急いで兄チャマに目隠しします。
「お兄様は見ちゃダメ!」
「えっ? 何? どうしたんだい、咲耶ちゃん?」
咲耶ちゃんの不審な行動は気になりますケド、袋の中身の方が気になるから、こっちを
先に確認するデス。
「何が入っているのかな?」
紙袋から出てきたのは、女の子用の下着でした。
でも、なんだかずいぶんスースーした感じの下着ですね。色も真っ赤でハデハデです。
これを見た他のみんなも、ちょっと呆れ顔でした。
「もう。咲耶ちゃんったら」
「ボク、そんなの初めて見たよ」
「か、花穂も、初めて」
「フフフ…………。なかなかやるね、咲耶ちゃんも」
「はしたないですわ」
「じいやとおんなじ〜」
そのとき、四葉の後ろから覗き込んだ雛子ちゃんが言いました。
「あっ。ヒナ、知ってるよ。これ、しょうぶぱんつ、って言うんだよね」
「ひっ、雛子ちゃん!」
……何の勝負デスか?
「こほん。……それじゃあ、次は雛子ちゃんのプレゼントね」
「うん!」
わざとらしくせき払いした咲耶ちゃんに促されて雛子ちゃんが持ってきたのは、リボンを
結んだ黄色い小鳥でした。小鳥と言っても、プラスチック製のおもちゃデスよ。
「ヒナのプレゼントはね、ピヨちゃんだよ」
「アヒルさんですか?」
「違うよー。ピヨちゃんだよ。お風呂でね、いっしょに遊ぶんだよ」
……四葉、もうそんな歳じゃないデス。でも、ここはありがたくもらっておきます。
「ありがとうデス、雛子ちゃん」
「うん! 四葉ちゃんもお風呂でいっしょに遊んでね」
「分かったのです」
四葉、笑顔でピヨちゃんを受け取りました。ちょっとだけ大人になった気分デス……。
「わたくしからは、これを」
鞠絵ちゃんが四葉に差し出したのは長方形の包みでした。縦20センチ、横15センチ、
厚さは2センチくらいデス。
「こ、これは!」
そのとき、四葉の緑色の脳細胞が冴え渡りました!
「これは本デスね! 四葉の推理がそう告げているのデス」
「まあ。正解よ、四葉ちゃん。子供向けに訳されたホームズの文庫本です。どうして
分かったのでしょう?」
「クフフッ。真実はいつも一つデスッ!」
今日の四葉は絶好調なのデス!
本を開いてみたら思ったより漢字が多かったけど大丈夫デス。……たぶん。
「姫からのプレゼントは、これですのっ!」
背中に両手を隠してやってきた白雪ちゃんは、四葉の前に白い何かを広げマシタ。
これは、エプロンです。
「このエプロンは汚れが簡単に落ちるんですの。姫のおすすめですの」
「それはスバラシイです。四葉、キッチンでお手伝いするとすぐに服を汚しちゃうから
助かりマス」
「四葉ちゃんはお手伝いだけ? 自分でお料理はしないのかしら?」
「そ、それは……えっと……お料理くらい時々するデスよ」
四葉、本格的に料理に挑戦してみるデス。……きっと。
「ここに取り出しました1本のペン」
鈴凛ちゃんが自慢げに掲げたのは、どこにでも売っているようなマーカーペンでした。
「一見、どこにでも売っているようなマーカーに見えるけど、ただのマーカーと違うのは
そのインク」
「インク?」
「そうなの! 見ててね」
鈴凛ちゃんはノートを広げて、ペンのキャップを取りました。
「最初はね、このペンで普通に書くの。サラサラっと」
「何も書けないですよ」
鈴凛ちゃんのペンが通った後も紙は白いままでした。
「そこで、こっちのライトの出番よ!」
そう言って鈴凛ちゃんは小さなペンライトを取り出します。
「このペンライトでこうやって照らすと……」
「ややや? 字が浮き出て来たデス!」
鈴凛ちゃんがペンライトのスイッチを入れると、さっきまで真っ白だった紙に『四葉』
って漢字が現れました。自分の名前くらい漢字でも分かるデスよ。
「名づけて、探偵ペン&探偵ライト。探偵ペンで書いたものは探偵ライトを使わないと
読めないの。秘密の暗号に使えば誰にも読まれないわ。どう? 驚いた?」
「四葉、びっくりデス! これ、本当にもらってもイイですか?」
「もっちろん。四葉ちゃんへのプレゼントだもん」
四葉、探偵ペンと探偵ライトを胸のポケットに挟みました。ちょっとカッコイイかも。
クフフフッ。
「次は…………私の番だね。私からの贈り物……受け取ってもらえるかい?」
「ち、千影ちゃん。もちろん喜んで受け取るデスよ」
でも、なんだか嫌な予感がするのはどうしてデスか……?
「フフフ…………。四葉ちゃんも悪霊の気配を感じたのかい? でも、心配はいらないよ。
悪霊払いの結界を張っておいたからね」
結界って……もしかして、さっきの聖書ですかっ!?
……怖いから聞かないでおくデス……。
「そうだね。その話はまた今度にしよう。私が用意した贈り物は…………これだよ」
「これ、何デスか?」
千影ちゃんが出したのは、蜘蛛みたいなのがくっついている、なんだか不気味な飾り
でした。
「これはドリームキャッチャー。悪夢を捕まえるという魔除けの一種だよ…………フフフ」
「そ、それはどうもデス……」
これ、枕元に置いて眠るデスか!?
「四葉ちゃんに似合いそうな生地が手に入りましたので、浴衣を仕立ててみました」
「うわー」
春歌ちゃんのプレゼントは淡い緑色の浴衣でした。お店で売っていてもおかしくない
くらいの出来栄えデス。四葉、思わず見とれちゃいました。
「スゴいです。可憐ちゃんも器用だけど、春歌ちゃんも器用デスね」
「それほどでもありませんわ。恥ずかしながら、二度ほど針で指を刺してしまいましたし」
そう言って春歌ちゃんは四葉に指を見せてくれました。バンソーコーが張ってあるデス。
「わたしもお人形を作っているときに刺しちゃったのよ。もう治っちゃったけれど」
可憐ちゃんも自分の手を見せてくれました。
春歌ちゃんや可憐ちゃんでも失敗しちゃうんデスね。四葉だったら、きっと全部の指に
バンソーコーを張っているデスよ。
「亞里亞は〜、おリボンなの〜」
亞里亞ちゃんからのプレゼントは、ヒラヒラしたフリルの付いた水色のリボンでした。
とってもとってもとーっても可愛くて、人前では付けられないくらいの可愛さデス。
「こんなフリフリのリボン、ちょっと恥ずかしいデスね……」
「……くすん」
「あああっ! チガウですよ、亞里亞ちゃん。四葉、恥ずかしいだけでホントは
とってもとってもとーっても嬉しいのです!」
「それでは、結んであげますね」
四葉が必死になって亞里亞ちゃんに説明していると、鞠絵ちゃんがリボンを持って
四葉の後ろに回りました。そして、四葉のリボンを解いて、代わりに亞里亞ちゃん
からもらったリボンを結びます。
「四葉ちゃん、とっても似合っていますよ」
「そ、そうデスか? やっぱり照れるデスね」
「本当ですわよ。ほら」
春歌ちゃんが鏡を見せてくれました。今の四葉は、思いっきり「女の子!」って感じ
なのデス。
亞里亞ちゃんも一緒に鏡に映ってニッコリ笑いました。
「亞里亞とおそろい〜」
「そうデスね。クフフフッ」
四葉もなんだか嬉しくなって笑っちゃいました。
「僕からのプレゼントはこれだよ」
そう言って兄チャマが四葉に渡したのは一枚の紙切れでした。
その紙には何か絵が書いてあります。
「宝の地図みたいなんだけれど、僕には解読できなかったんだ。四葉ちゃんだったら
解読できるかも知れないと思ってね」
「たっ、宝の地図! スゴいです!」
宝の地図なんてドキドキです! どんな宝物が眠っているか、考えるだけでワクワク
するデス。
「宝物は必ず探し出してみせマス! 兄チャマの名にかけて!」
四葉、自分に気合を入れて、改めて宝の地図を見てみました。
「えっと……。この地図は、家の間取り図みたいデスね。リビングがあって、キッチン
があって、お庭に玄関……これは、兄チャマのおうちなのデス!」
「うん。そうだね。僕もそう思ってあちこち探したんだけれど、肝心の宝の隠し場所が
どうしても分からないんだ。四葉ちゃん、分かるかい?」
「ちょっと待って下さいデス……えっと……」
宝の地図だったら、宝のありかにバツ印が描いてあるはずデス……。でも、そんな印は
どこにも書いてありません。
うーん……。このままだと迷宮入りデス。他にあやしいところは……あっ。
「地図の横に書いてある『探偵の灯を使うべし』の言葉がヒントみたいデスね」
……探偵の灯? 灯って、ライトのことデスよね。それじゃ、探偵の灯って、鈴凛ちゃん
からもらった探偵ライトのことデスか?
四葉、胸ポケットの探偵ライトを手に取りました。
『探偵ペンで書いたものは探偵ライトを使わないと読めないの。秘密の暗号に使えば
誰にも読まれないわ』
「はっ! 四葉、分かっちゃいマシタ!」
今日の四葉は絶好調過ぎて自分でも怖いくらいデス!
四葉、探偵ライトのスイッチを入れて宝の地図を照らしてみました。
すると、四葉の推理通りに出てきました。バツ印です!
「宝のありかは、ここデスね!」
四葉、テーブルクロスをめくって、テーブルの下を覗きいてみました。バツ印が指し
示しているのはリビングのテーブルだったのです。
そこには小さな宝箱がありました。宝物に間違いありません。
「兄チャマ、宝物見付けたデス!」
「やったね、四葉ちゃん。四葉ちゃんは名探偵だよ」
四葉が宝箱を持ってテーブルの下から出てくると、兄チャマは両手を広げて喜んで
くれました。
「クフフゥ(はぁと) 四葉は名探偵なのデス!」
兄チャマに褒められちゃうと、四葉、なんだか照れちゃうデス。
「さあ、四葉ちゃん。宝箱を開けてみて」
「はいデス。……あっ。デジカメが入っていました」
宝箱の中からはデジタルカメラが出てきました。兄チャマが持っているデジカメの
色違いです。
「この宝物は発見した四葉ちゃんのものだよ。おめでとう、四葉ちゃん」
「お宝、ゲットしましたデス! クフフッ」
モチロン四葉は分かってマスよ。宝の地図も、デジカメも、兄チャマが用意してくれ
たんですよね(はぁと)
兄チャマ……ありがとう……デス……。
次に四葉が見たのは、蜘蛛の飾りでした。
「うきゃあっ!」
四葉、ビックリして変な声を上げちゃいました。
千影ちゃんからもらったドリームキャッチャー、急に見たら心臓に悪いです。おかげで
スッカリ目が覚めちゃいマシタ。
「ところで、ここ、どこデスか?」
体を起こして周りを見ると、見覚えがあるラジカセとかパソコンが置いてありました。
ここは兄チャマのお部屋です。
「……四葉、どうして兄チャマのお部屋にいるのかな……?」
「四葉ちゃん? 起きたのかい?」
兄チャマがドアを開けてお部屋に入ってきました。
「あっ、兄チャマ。四葉、どうしたんですか?」
「パーティーの途中で眠っちゃったんだよ。きっと疲れていたんだね」
「そうだったんデスか……。四葉、はしゃぎ過ぎちゃったんですね」
四葉、自分が疲れているのも分からないほど大騒ぎしていたみたいです。
昨日の夜もワクワクして眠れなかったのに、ちょっと無理しちゃいマシタ。
「それでいいんだよ。四葉ちゃんは元気な姿が一番可愛いからね」
「あ、兄チャマ、面と向かって言われたら照れちゃうデスよ。キャハーッ(はぁと)」
「ははは。もう元気が戻ったみたいだね」
兄チャマは笑いながら四葉の頭をなでて、それから、四葉にいいことを教えてくれました。
「四葉ちゃんのおうちには連絡してあるから、今夜は泊まっていくといいよ」
「兄チャマのおうちにお泊りできるんデスか!? キャッホーッ!」
四葉、もう天国にいるくらいハッピーです!
「そうそう。これ、四葉ちゃんに返しておくね」
「あっ。四葉が見つけたデジカメなのです。……あっ」
「えっ? どうしたんだい?」
兄チャマからデジカメを渡された四葉は、とってもイイことを思いつきました。
このデジカメで最初に兄チャマをチェキしちゃうのデス! クフフフゥ(はぁと)
そう思って、四葉、兄チャマから見えないようにしてデジカメの電源を入れました。
兄チャマが持っているデジカメと色が違うだけだから使い方は知っているのデス。
「兄チャマ、チェキーッ!」
「わわっ」
パシャッ!
「成功デス! 兄チャマのビックリした顔をチェキしました!」
「いきなりなんてひどいなぁ」
兄チャマは笑いながら髪型を整えます。そんなことしてももう遅いのです。
「クフフフッ。ちゃんと撮れているか確かめてみるデス。……ややや?」
デジカメの中には、兄チャマのビックリ顔の他にもう一枚、女の子の写真が入って
いました。頭にフリフリのリボンを付けたまま眠っている、その女の子は……。
「これ、四葉デスか?」
そしたら、兄チャマはニコニコしながら言ったデス。
「ごめんね、四葉ちゃん。とても可愛い寝顔だったから一枚撮らせてもらったんだよ」
イヤ〜ン(はぁと) 四葉、兄チャマに寝顔をチェキされちゃっていたのデス!
「兄チャマ、ズルイです。四葉、お返しに兄チャマの寝顔をチェキしちゃうデスよ」
「ははは。……あっ、そうだ。お風呂を沸かしてあるから、また眠くなる前に入って
きたら? バスタオルは用意しておくから」
「それじゃ、四葉、お言葉に甘えて入ってくるデス」
「お風呂の中で眠らないようにね」
「わ、分かっているのデス……」
……分かっているつもりだったのに、四葉、お風呂でのぼせそうになっちゃいマシタ。
ピヨちゃんと遊んでいたらいつの間にか30分も過ぎていたのです。バスタオルを持って
きてくれた兄チャマにドア越しで声を掛けてもらわなかったら危ないところでした。
だって、前にお泊りしたときは、四葉、兄チャマに……キャハーッ!
恥ずかしいデスーッ!
あのときのことは兄チャマと四葉の二人だけのヒミツです! 誰にも言ってはイケマセン。
お風呂から出たら、春歌ちゃんからもらった浴衣をパジャマの代わりに着てみました。
薄緑の浴衣はバスローブよりサラサラした肌触りで、お風呂上りの体にひんやりとして
気持ち良かったデス。
でも、四葉、浴衣なんてめったに着ないから、帯の締め方とか良く覚えてませんでした。
それで兄チャマに聞きに行ったら「とっても似合っているよ」って褒められちゃって、
またまたデジカメで撮られちゃいました(はぁと)
今日の四葉は兄チャマからチェキされまくりなのデス!
四葉は兄チャマのことが知りたくてイギリスから飛んできたケド、もしかしたら兄チャマも
四葉のこと、いっぱいいっぱい知りたいのかもぉ! キャハーッ!
もしそうだったら、四葉、ちょっぴり恥ずかしいケド……兄チャマにだったら何だって
教えてあげちゃうデス(はぁと)
四葉、今夜は一晩中兄チャマと遊ぶつもりだったのに、また眠くなってきちゃいマシタ。
兄チャマ、おやすみなさい。そして、ありがとうデス。
また来年もお祝いしてくれると嬉しいな(はぁと)
<終>
--
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
猫間 鈴秋 / NEKOMA SUZUAKI
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