こんばんは, 宮本です。続きです。

<c0hca2$2u1$1@news01.iij4u.or.jp>の記事において
ishihara@y.email.ne.jpさんは書きました。

>>空間反転=メビウスの輪(の本質)というふうに指摘なさった方も、
>>あのときいたと記憶してます。スピン(角運動量)は、まさにその空間反転を
>>反映してるんじゃないんですか?違ってましたら教えて下さい。

上記の指摘について, 残念ながら記憶にありません。また google にある
「メビウスの輪」と題された一連の記事を少し辿ったのですが, まだ発見
していません。
当時, 石原さんは, 

|| 電子がループ軌道を描いていて、1周するごとにスピンが反転する。

という「電子版メビウスの輪相当品」, 「幾何学的なメビウスの輪とは直接
関係ない」「メビウス・コンパチ」を最終的には提起されました。
これに対して河野さんが

||パリティの異なるワームホールってわけですよね。3次元版はクラ
||インの壺っていうんですが、4次元版は、何故かワームホール。
||
||こいつはなかなか便利で、右手袋をぶちこむと左手袋になって出て
||来ます。生産性倍ですね。

と言っています。これとはちがうかな。


さて過去の発言とは別に, 空間反転と(スピン)角運動量の関係をおさらい
してみました。

ここでこの「空間反転」が何を意味しているかを良く考える必要があります。

これは私にとっては, 空間座標の符号の反転 (x, y, z) → (-x, -y, -z) の
ことを連想させます。この操作は点群では「反転 (inversion)」という対称
操作です。対称心 (center of symmetry) に関する対称操作です。最も簡単
には点群の指標表を見るとすぐにわかるように, x, y, z の各軸回りの回転 
{R_x, R_y, R_z} の属する表現において, 反転操作に対する指標は +1 です
(二重縮重していれば +2)。また二重群におけるスピンの属する表現においても
同じです。すなわちこの意味の空間反転によっては, スピンの符号は変化
しないのです。

これについて, キャラクタで絵を描いてみましょうか。全て全角文字なので
崩れないと思うのですが ...
 
   |         |
 ←←|←←     ←←|←←
↓  |  ↑ ・ ↓  |  ↑
 →→→→→     →→→→→
   |         |

さてこの図の左の角運動量は up です。これを中央の点を対称心として右に
移すことを考えます。左端の向うからこちらへの動きは, 右端の手前から奥
への動きへと投影されています。また手前の縁の左から右への動きは, 奥の
右から左への動きに対応しています。この様にして移された右の角運動量は, 
やっぱり up です。

しかし「空間反転」が上記とは別の意味であれば, また別の議論になるでしょう。
例えば上記の河野さんが言うように「パリティが反転する」というのもその
一つかもしれません。この場合, スピンが反転することは対称操作の定義に
折り込み済みですから, スピンは反転します。当たり前ですね。しかしこの
操作の場合「反転」ではなくてむしろ「鏡映」と呼んで欲しいです, あるいは
しっかり「*パリティの*反転」と。


... と, こうやって書いてみると, 当時の説明は全く舌足らずでしたね。でも
今回これだけの文章をまとめるのに, かなりの労力を費やしたことも事実
です。とても常にできるものではないことは, ご理解いただけると思います。
そんなこんなで, ついつい考えの方向性を示す「お題目」を提示するだけに
して, 背景の詳細の説明を省略してしまいがちになります。わたしがくどくど
書くよりも, きちんとした本を各自が参照した方が好ましいとか, いちいち
細かく書くのがめんどくさいとかいう意識もあるかもしれません, 
とイイワケをして, 今日はおしまいにします。ふう。
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Ryo MIYAMOTO; rmiya@cc.hirosaki-u.ac.jp;