秋
          水
          を
          切
          り
          抜
          く
          鷺
          の
          白
          さ
          か
          な                 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
秋水は言うまでもなく清冽なる水である。
しかし、私の見た白鷺は
実は、私の住む町の河床はドロに埋まった
泥水にいた。
自転車のようなものが、あるいは、ゴムのようなものが
河床に横たわり、排水が流れ出る土管からは
泡のようなものが湧き出て
それでも生命力ある鯉や小動物はこの汚水に生きている。
白鷺はその小動物を鋭い視線で突き射し、生き延びている。

秋水に生きる白鷺はもはや古代のものであり
現代の白鷺は、現代の秋水という汚水に生きている。
それでも白鷺の白の美しいことよ。その視線の鋭いことよ。

まるで、泥水を切り抜いたようではないか。

生きることのすさまじいまでの苦しみをこの白とりにして
われわれと共有している現代という時代の恐ろしさよ。

君はそれでも生きるのか。
それゆえに死を選ぶのか。

生きねばならない。白鷺がこの世に生きている限り
生命を共有するわれわれは白鷺の如く汚水に美しき白の
切抜きをもたらす命を、汚水に投げ捨てるのではなく
汚水を切り取って生きていかねばならない。

理由は、白鷺の眼に聞いてみよ。あの恐ろしく鋭い孤独に。