Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
佐々木@横浜市在住です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
# 嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第171話『眠った翼』(その1)
●桃栗町の外れ
クィーンを見送った後、屋敷へ引き返したノイン。少し遅れて後を追ったミカサが
耳打ちします。
「これで解散という事でよろしいですか?」
「ああ、そうでしたね」
ノインは立ち止まると周囲を見回してから宣言しました。
「この地の時間で20時間の間を準待機とします。各部隊には体力の回復に努める
様に伝達を。幹部諸君は日没後に我が屋敷へ。以上、解散」
周囲より、夫々の種族の風習に従った了解の返事が返ります。そして朝靄に
溶ける様に一人また一人と姿が減っていきました。全員が去った事を見届けて
から再び屋敷に戻りかけたノイン。ですが一人残っていた事に気付きます。
もっとも相手はノインに用があった訳では無く、単に考え事をしていて
最初からノインの宣言すら聞いていなかった様子であったのですが。
「トールン殿、まだ何か?」
「…ん?いや、すまん。何であったかな」
我に返ったトールンは既に場が解散となっていた事に気付いた様で、居心地の
悪そうな表情を見せました。
「申し訳無い。考え事をしていたのだ」
「良ければ茶など如何です」
「うむ。頂こう」
ノインに招かれ屋敷のリビングに腰を落ち着けたトールン。しかし、元より
用があったという訳でも無く押し黙ったままでした。もっとも普段の彼ならば
半日以上もの休息を設定したノインに対して何か一言あって当然なのですが。
「何か気になる事でも?」
「いや、別にそういう訳では無いのだが…」
豪放な彼が言葉を濁すのは非常に個人的な事柄で頭がいっぱいの時だと、ノインは
彼との付き合いの中で理解していました。ならば別に無理に話させる必要も無い、
とはいえ少なからず好奇心を抱いた事も事実です。
ノインは彼にお茶を持ってくる様に全を呼んで言い付けました。
「熱い奴をね」
「はぁ〜い」
全が見えなくなっても尚、トールンはやはり言わずに済ますかといった風に
黙っていました。ノインは思った事を呼び水として聞いてみます。
「アンの事ですか?」
「ふむ。やはりお判りになられるか」
「あなたがそういう顔をするのは、あの娘に関しての時が多いですから」
「やれやれ」
そこでひと呼吸置いてからトールンは続けました。
「ふと思ったのだが、アンをな、戦場であるこちらに置いておくのはどうかと。
そこで魔界へ戻られるクィーンに、無論お守等頼む訳では無く誰か竜族の者を
つけた上で同行させて頂き先に送り返してしまった方が良かったかも知れんとな」
「そうですね」
「だが、やはり言いださずにおいて良かった。あまりにクィーンに対して個人的な
願いが過ぎると言うもの」
「実は私も同じような事を考えていました」
「左様であったか」
「それにクィーンは決してお怒りにはならなかったでしょう。今回の事も含めて、
クィーンの働きかけがあったからこそなのですし」
「それはそうかも知れんが」
「それに」
「ん?」
「クィーンが戻られて魔王様へ報告が入れば、放っておいてもアンを迎えに
跳んでくる者が居るのではありませんか」
戦士として或いは友として尊敬し合う間柄でありながら、或いはだからこそトールンは
ノインに対して不快感を隠さない正直な表情を見せていました。
「ノイン殿、まさかアレの事を言っておられるか?」
ノインは直接は応えず、ただ失言であったと言いたげに拳で自分の額をとんとんと
叩く仕草を見せました。それからやんわりと違う方向から言い直します。
「正確な事が知れれば魔王様が迎えの者を出す様にと御配慮下さる事でしょう。当然、
魔王様の側近くに務めていてアンの事を知っている者に声が掛かる、そう言いたかった
のですよ」
「むぅ…」
本当は自分から魔王様に無理矢理にでも売り込んで、許しが無くても勝手に来る
でしょうけれどね、というのがノインの考えでしたが勿論態々竜族の逆鱗に触れて
みる趣味は彼にはありませんでした。そして魔王の意思でもある、という型式で
あれば竜族達も黙って従う事も計算の内に入っています。
「魔王様の命なら致し方あるまい…」
「あなた方の風習に口出しする気はありませんが、」
「では、この話はおしまいにして頂く。失礼した」
トールンは一方的に会話を打ち切ると、勝手知ったる屋敷を嵐の様に去って
行きました。
「やれやれ」
「ノイン様ぁ、お茶でぃ〜す」
「ああ、有難う」
「トールン様はどちらでぃすか?」
「帰りました。お茶は私が頂きます」
「はぁ〜ぃ」
もうもうと湯気の上がっているカップを見詰めながら、少し時間を置けば
熱も冷めるでしょうからね、とノインは考えていました。
●オルレアン
玄関呼び鈴の連打で目覚めるまろん。出かける時間まで起きている事に失敗し、
中途半端に二度寝してしまった為に普段以上に鈍い頭で仕度を済ませました。
扉を開けて外に出ると都が今にも噛み付いて来そうな顔で待っています。
「遅いっ」
「ごめ〜ん。さっき寝たばっかりだから…」
「何?夜、眠れなかったの?」
「うん。まぁ寝付きが悪かったというか何というか」
「ふ〜ん…」
都の視線がじっとりとまろんに纏わりつきます。
「な、何?」
まろんを押し退けて、都は閉じられた扉を引き開け中を覗き込みます。
注目すべきは玄関先に並ぶ履物でしたが、都の予想した様な痕跡はありません。
「誰か泊めたって訳でも無さそうね」
「そ、そんな事無いってば」
「でも何か怪しい…」
「怪しくないない」
都を玄関先から引っ張り出して扉に鍵を掛けると、まろんは都を引っ張る様にして
学園へと向かいました。
(第171話・つづく)
# リハビリ代わりに軽くジャブ。^^;
## 第171話はちょっと血生臭い話になります。
## 全7パートくらいの予定。
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
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