『ブラックホール』  


ブラックホールの表面では
時間が凍っている
凍る音が噴水のように  

ブラックホールから遠く離れ
僕たちは ロザリオをぶら下げて
ハートの中の「りんご」を ひとかじりして
津波のように膨張する時間を
聞き入っている

だれかが 喉の奥で 噴水のように笑った

ここは戦場だったのだ
僕たちの喉には戦場があったのだ
そこには、喉には
ロザリオの骨が突き刺さっていて
空に飛び交うりんごを指差し
キリストの顔をした獣が けたたましく笑っている

つられて僕たちも 噴水のように笑っている

僕は キリストの顔をした獣が飛び出した時の
ブラックホールの割れる音を思い出そうと 
両手で口を押さえる
だが 
噴水のようなキリストの笑い声は あちこちから現れ
りんごから跳ね返ってくるばかり

ロザリオの骨も つられてソプラノで笑っている
30億の闇から 
30億のキリストのような顔をした獣が現れ 
噴水のように  噴水のように