テロルの夜明け
つまり、ここは重役会議室で、ただ今会社の経営方針に関する議論が行
われているのである。
の「さて、お集まりいただいた皆様、
これから、当社来期のビック・プロジェクトについての簡単な説明と、
質疑応答をいたしたいと思います。
ちなみに、このプロジェクトはまだ極秘扱いですから、
お手元に配りました資料は会議終了後に
すべて回収し処分いたしますので、
十分ご高覧いただきたいと存じます。」
部屋の明かりが暗くなり、会議室の壁に据えられたプロジェクター画面
が眩しい白で浮かび上がる。
の「さて当社は旅行業界のリーディングカンパニーとして今までも
たくさんの市場を開拓してまいりました。それはビジネスや観光と
いった従来の意味での旅行から、難民や移住、亡命といったちょっと
採算のとれそうもないものまで商品化し、今ではそれらの市場も
活況を呈していることは皆様ご承知のことと思われます。
そして、我が社は創立百年を迎える画期的な年に当たります。」
プロジェクターに宇宙空間の絵が映し出され、「SPACE ODYSSEEY」の
タイトルバックが大写しとなる。
司会者はやけにあっさりと結論を言う。
の「そこで宇宙旅行を企画することにしました。」
こ「ずいぶん陳腐なんじゃないか、
そんな企画だったら、どこでもあるし話題にすらならないぞ、
一体、宇宙のどこに旅行するんだ」
の「アンドロメダです」
お「いまの地球にアンドロメダまで行く技術があるのか、
大体何年かかると思っているんだ」
の「確かに…
残念ながら、今の地球文明は、アンドロメダはおろか
太陽系を出ることすら難しいですし、採算も取れません、
でも、方法はあるのです、
今の技術で、しかも採算がとれる方法が」
こ「まさか、夢で行って来たつもりになるというもんじゃないだろうな」
の「いいえホントに行ってくるのです、
つまり、宇宙人に乗せていってもらうのです。
これなら技術は宇宙人のものに便乗するだけですし、
飛んできたという実績がある技術ですから安心です」
お「その君のいう宇宙人というのは、その宇宙船にタダで
乗せてくれるほど気前がいいのかね、
採算がとれないだろう」
の「そこは発想の転換が必要なのです。
みなさん同様、不肖私にも宇宙人の知り合いというものがおりませんで、
休日に釣りに行くのに宇宙船に
ついでで乗せていってもらったためしもありません。
でも、お友達じゃないのですか、ちょっと迷惑かけても
あまり心が痛みまないのも事実です」
こ「つまり…」
の「宇宙人を脅迫して宇宙船を乗っ取って、乗せていってもらうのです」
みんな頭を抱える。
の「すでにこのプロジェクトは準備が進んでいるのです。
(プロジェクタ画面に地球上の地図が映し出される)
これにマークのついたところでは宇宙人を捕獲するわなが仕掛けられ
さんかくのマークの場所では宇宙人を脅迫してうまいこと安全に
旅行ツアーを成功させるための交渉術を訓練するためのツアーコンダ
クター養成所が動き出しています
内々にツアー参加者の予約も数百件集まり、内金だけで5千万ドルを
越えているのです」
こ「つまり、人のふんどしで相撲をとる…と」
の「なんでも自前で開発しようという考え方は今の時代では遅れています。
技術は使えればいいのです、壊れたら直してもらえばいいのです、
問題は人の技術をどう使いこなすかということと、
どのように運用するか、つまり人を使いまわすかということで、
これは会社の経営と変わりないのです」
こ「なるほど、技術はなくとも使えればよいか」
さて、このあと会議がどのようになったかは知らないが、彼らが頼みの宇宙人
を捕まえないことにはどうにもならないということに気が付くのに時間がかかっ
たということは想像に難くないだった。
--
のりたま@ついでに意志の疎通もとれないと「話しにならん」
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735