ここは日本国首相官邸、今日もいい年したおじさん達がなんの役に
立つのか分からん文書のてにおはを直すのに血道を挙げているので
あった.

そこにいつもはゴルフで見かけない国家防災対策委員長のタナカが
駆け込んできた.おどろく官僚たち.

タナカ「しゅ、首相、たいへんです.
    ゴジラが、ゴジラが東京湾に現れました」

しかしこんなときでも、北朝鮮にこけにされ中国にアホ呼ばわりさ
れても動じない首相は焦点の合わない視線を国家防災対策委員長に
向けて投げかけるのだった.

タナカ「ゴジラです、ゴ・ジ・ラです」
首相 「分かった、分かった、ゴジラがどうしたというんだ」
タナカ「現れました」
首相 「そこまではもう聞いた」
タナカ「ゴジラが東京湾に現れました」

埒のあかないやり取りにごうを煮やした官房長官が口を挟む.

官房長「ゴジラは小笠原に出現した時点で
    自衛隊が撃破したのではないのですか」
タナカ「そのゴジラが東京湾に現れました」

そこにつかつかと女が現れた.

秘書官「ゴジラは小笠原で撃破されましたが、
    そのゴジラが東京湾に現れたのです.
    緊急事態ですので対策会議の即時招集をお願いいたします」
タナカ「えりこ君、たすかった、
    私は走ってきたもので息が切れて、息が切れて」

タナカは大粒の汗をハンケチでぬぐいながら、断りもなくその辺の
ソファーにどかっと腰を下ろした.

首相 「撃破したゴジラが東京湾に現れるという事態が
    よく理解できないのだが、どういうことかね」
秘書官「つまり、撃破されたゴジラの死体が
    東京湾に流れてきたということです.
    正確に申し上げますと、
    自衛隊がゴジラ撃破のために使用した
    新兵器マグネトロンXの反動で発生した津波によって
    腐敗が進むゴジラの死体が東京湾に向かって流れてきているのです
    津波の東京インパクトまで30分しかありませんが
    ゴジラの死体が津波によって東京に置き去りにされた場合
    首都圏の衛生状態は最悪になることが予想されます」
官房長「そんな動物の死体なんかよりも
    津波のほうが問題ではないのか」
秘書官「津波に関する対策はすでに取られております.
    規模も問題ありません.
    しかし大量の腐敗物が首都圏に流れ着いた場合
    防疫上処置がないのです.
    すでに小笠原は伝染病隔離地域になっています」
首相 「わかった、とにかく対策会議を招集しよう」

かくしてそれから対策会議が開かれたのですが、ゴジラの死体残骸
が東京湾に漂着することを阻止する対策には間に合わず、関東沿岸
はそれから10年の間臭くて人が立ち入ることができない場所と化
してしまったのでした.
日本政府はこの事態を重く見て「遺憾」の意を表明したのでした.