時間があるので大江健三郎の『死者の奢り・飼育』を読んでみました。独特の文
体を持っていることとノーベル賞作家なのに読みやすいことに感銘を受けました。
読んでいて共感を覚えたのは『飼育』のなかで外人兵が樽の中に排便するシーン
でした。私がライフラインに繋がれていなかった頃トイレは蓋付きのポリバケツ
で代用しており無数の虫が湧いて浮き沈みしている様はまるで『死者の奢り』の
死体のようでした。私は肥料がすぐに必要という状態ではなかったため十分に腐
熟させそれらの虫は皆死んでしまいました。仕事をしていると意識に浮かび上が
ってこない実存に思いを馳せることのできる小説でした。

大城貴紀