The Wind-Up Bird Chronicle
村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を読みおわった。大変面白く読みやすかっ
た。戦時中の残虐なシーンの描写が印象に残っている。戦争に関する描写は歴史
書には出てこないし小説も戦争につながるとして取り上げなくなっている。戦争
を体験したことのない者にとってはまるで戦争が起きたかのようにありありと感
じられた。描写がとてもうまいと思う。男女関係の部分は他の小説にも沢山あり
陳腐に感じられた。洞窟の比喩も斬新さはなかった。コンピュータの通信が縦書
きで出てくるのは斬新だった。あれをユニックスでやろうとするとエディタを介
さずに日本語の入出力ができなくてはならない。アルファベットならtalkコマン
ドやwriteコマンドでできる。
それから村上春樹の小説は後に残るものが少ないように思う。沢山小説があるな
かで読み捨てできることは利点だが厳選された小説を血肉化するまで読みたいと
いう気持ちもある。
それからこの小説は調停について書かれており意識と生活が分離している現代人
にとっては永久に分からない小説なのかもしれない。権力についても書かれてい
る。人の内臓に当たる部分をよく書いてくれたと感謝したい。
大城貴紀
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