今回はjapan.anime.pretty はクロスさせていません、どう考えてもpretty
じゃないし。




 先日、フランスのラグビーW杯が終わりましたが、1つ前の日本大会が20
19年でさらにその1年前、明らかに日本大会を当て込んで準備されたと思わ
れるのが本作です。リアルのラグビーもまあまあ盛り上がり、余計に本作の
出来が映えて見えたもので、そもそも寸評は書いていたものの機を逃し、再
機を見計らって記事を投下してやろうと思ってたら放送から5年 orz 。塩漬
けにも程がある w 。なのでいい加減投下します。タダのスポ魂ではない、し
かし集団スポーツ → 転じて、集団行動に大事なことはこれでもかと詰め込ま
れていてなかなか興味深く面白い。ただのスポーツアニメと思うことなかれ。
良く出来た逸品と考えます。

 でも今年(2023年 フランス大会)やその近辺で、ラグビーやサッカーや、
何なら野球でも、スポーツをモチーフにした作品って何かありましたっけ?
ハイキュー(バレーボール)くらい? 女子サッカーが、一時盛り上がっ
てからの熱の冷め具合がすさまじいと言われてるそうですが、アニメ業界
でもスポーツものの趨勢は“世の理”なんですかねぇ。確かに「スポ魂」
という時代ではないのでしょうが。

#MIXは、あれを野球(というかあだち充作品は往々にして)に分類
 するのはなんか引っかかる。確かに高校「野球」なんですが・・・。






おはようございます。
大和郡山のブラストマインダー、麻上 迦楼羅@ZAQ大阪です。


関西地上波限定かつ麻上の守備範囲内の作品で、「テレビ用アニメーション
作品」の寸評です。
いつものようにf.r.a 公式採点方式&公式記号方式(バカ)で採点しています。
5年前の作品なので、鈍器でどういう扱いだったか全く覚えていません。
日本大会の前に本作を観ていたのに、寸評投下するのは5年後という不思議。

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●『ALL OUT』(毎日放送<TBS系>)
 総合:5(開始時評価:3)
 ストーリー:4.5 ビジュアル:4+ キャスト:4.5 楽曲:4
 個人的評点 OP:4 ED:5     トムス エンタテインメント
                     MAD HOUSE

#さすがトムスとマッドの2馬力、ほぼ完璧。恐れ入る。

 他のスタジオも是非見習って欲しい。「緩急を利かせた本(脚本)」とは
こういうのを言う、素晴らしい。即ち「緩急の付け方を『知っている』」に
他ならない。トムスも把握してるだろうしマッドも把握してることは想像に
難くない。そのふたつで作った作品です、教科書に載せても良いくらいだ。
ガチに走るときはどこまでもガチガチにつっ走り(ラグビーですし)、緩め
る時はどこまでもおバカなくせに1話の中で必ずどこかで上手く締めるんで
すね、菅平前にコーチの家に全員で押し掛ける話は好例。高校ラグビーの話
ですから麻上の様なオッサンにゃ「青臭い」と見えそうなものですがサにあ
らず。むしろ社会人層が観るべき作品です。「リアルな高校生や大学生が本
作を理解できるか?」とさえ思います。
 麻上は今でも、ラグビーのルールって、

・ボールを前に投げてはいけない
・ボールより前に出てはいけない
・トライ5点 キック2点
・ノット リリース ザ ボール

しか理解していませんが、それでもこの作品を「面白い」と思う。ルールを
知らなくても「面白い」と思う。なぜか? この作品の本意は、ラグビーを
触媒とした「人間ドラマ・群像劇」です。そりゃ高校ラグビーの話ですから
「ルール無用」とはいきませんしテクニカルな説明も含んでいます。しかし
「ラグビーを見る」は隠れ蓑、その後ろにある「何か」が実に面白い。その
「後ろにあるモノを後ろに置いたままで前からガッチリ魅せる」方法をヘッ
ドスタッフは熟知している。しかしそうすると「ガチガチになる」ことも理
解しているから「緩める方法」に腐心する、、、かなり切れ者のブレーンが
いると考えます。トムスとマッドの2馬力ですから(なんなら、テレコムも
入ってますから3馬力)ひとりくらいいるでしょうが。名前聞いたら「あぁ!
あなたですか!!」と小膝叩いてニッコリ笑う様などなたかが。その「何か」
が、子供の理解に堪えるか、、、しんどいだろうな、ある程度人生経験がな
いと。
・・・という“前提”で本作を見直しました、2回見た、都合3回見た。モ
チーフたるスポーツのルールを知らなくても楽しめるスポーツ作品はそうそ
うありません。現に主人公はラグビーを全く知らない状態から作品は始まり
ます。しかし「面白い」と思うのはなぜか。

『ラグビー云々の後ろにある「ヘッドスタッフのやりたい事」が確固として
 存在し、一切誤魔化さないし手を抜かない。それが見える、魅せる。』

おいそれと崩れない完全なスクラムが成立していてガチガチに作ってありま
す。故に、子供が見ても知識の足しにはなるでしょうが、子供にゃ「詰まら
ない」と思われるかもしれませんねぇ。なぜなら、大人の理解に耐えるよう
に作ってあるから(多分)。放映期間が連続1ターン。時期から察するにラ
グビー世界杯の“呼び水”的立ち位置の役目もあるでしょうが、それだけか?
「ベンチ」に日本ラグビー協会と早稲田大ラグビー部が入っています。とい
うことは、「ラグビー」は協会に、「人間ドラマ」を早大に助言・意見を求
めたと推察されます。ヘッドスタッフなのか制作委員会の誰かなのか、ある
いは原作者氏なのか存じませんし、はたまた“外野からの横槍”なのか存じ
ませんが、作るのはあのトムスとマッドです、

『ガチに作る』

という意志が存分に伝わって来る。高校ラグビーの話ですから、早大がいれ
ば良いように思えますが、『ラグビー』を描くには足らないとヘッドスタッ
フは読んだんでしょうな。日本ラグビー協会、ラグビーの意見を求めるのに
これ以上の頭脳は有りません。「自衛隊の話を描くのに自衛隊を引っ張り込
まなくてどうする!」と同様、天晴れな仕事です。そのおかげと推察します
が、作中において

            #「全く矛盾を感じない。」

“本職”の方なら「それは変」というのはあるかもしれません、あくまでも
ラグビー素人の麻上の感想です。
 でも“御都合主義”はありますよ。御都合主義が無かったらドラマが進行
しないし成立しないし。でも、あっても不自然じゃないか「そういうことも
あるだろうな」か程度で、あって良い御都合主義です、「矛盾」とは違いま
す。
 本作は高校ラグビーの物語です。つまり「リアル」です。フィクションで
はありますが、「SF」ではありません。画になっていることは全て現実に
起こりうる事。そして全く矛盾を感じなかった、コレ大事。
 一例がコレ。前から来る相手の膝辺りを狙ってタックルしようとすれば、
相手が咄嗟にキックしたら自分は顔を蹴られるのは当然。作中では、こぼれ
球を蹴ろうとする相手の前へ出てボールを取りに行ったんですが、蹴られま
すよね、当然。コレを正直に画にしてるんですね、ご丁寧に流血付きで。こ
の「当然」を当然として画にする力量、あるかい?、他のスタジオの皆さん
や。

#「勝つチームは準備が出来ているチーム」、なるほど。ラグビー然り、仕
 事然り。

 「ガチガチに締め」れば「スライムの如く緩める」。どうやって緩急を付
けるかは作品の「色」ですが、新しい手法では無く、むしろ古い。でも「使
い方」を理解できているから「捨て駒」はない。キャッチ絵、提供クレジッ
ト絵、エンドのタイトル絵などそれこそ「古典」ですが実におもしろい。マ
ネージャが魔法少女の衣装着たエンドタイトル絵は盛大に吹いた。
 本編もしかり。高校ラグビーだと一度は出てくる「花園」。

#麻上の公務員時代、後輩が花園ラグビー場の大規模改修工事の監督監理やっ
 てた。2019年、テレビで花園ラグビー場見てあの時の仲間達を思い出
 した。今も元気にしていればなによりだ。

本作でも地名だけは出てくるのですが、花園に対して「両国」と“くすぐり”
入れてきたんですね(誉めてる)。なるほどガタイが良ければラグビーに限
らず相撲も出来る。そこに至ったこのチョイス。アニメ・コミックに限らず、
ラグビーの作品で「両国で相撲」と聞いたのは初めてだ、素晴らしいセンス。
 それとか、合宿所の風呂話などはいかにも「合宿あるある」。女子部屋で
はラグビーの話こそしていますが「ヘッドスタッフ楽しそうだなぁ」。タッ
クル勝負も、一応ラグビーですがまぁ緩い緩い。
 しかし単に緩いだけでもなく。合宿前にコーチの家に部員全員で押し掛け
る話は、一見すると緩いように見えます。コーチの相方さんは“ネタ要員”
にしか見えません。が、「子供達と指導者を人として近づける」という観点
では、麻上が知る限りこの方法が最強。ラグビーは15人。12人で紅白戦
やってると言うことは部員は24人以上いる。ひとり辞めてますから20人
以上はいる(女子1人含む)として、がたいの良い(女子1人除く)高校生
が1軒家にそんな数で押し掛けたら非常識も甚だしいですが(実際そんな人
数描いてない)、「人を纏めるとは?」の一答が描かれています。「人間は
子供であろうと大人であろうと2人以上集まれば信用問題」とは時々耳にし
ますが、「子供に信用される大人とは? → 指導とは?」をうまく表現し
ていると考えます。緩い→締める→クールダウンという古典的ながら今も有
効な組立方です。毎話がこれだと“飽きる”んでそれもマズいですが、「緩
急を付ける」点では基本の手法です。菅平前の“1段落”のまとめも兼ねて
いる話なんでまさにクールダウン。「話の緩急」にストレスを感じない良い
本(脚本)です。

 本作は、麻上が珍しく5を付けた作品ですが、ストーリーは5ではありま
せん。唯一減点を感じたのがこれ。
 3年生のひとりが、諸々理由で「本気になれない」精神状態で、プレーに
精彩を欠く場面がラス前にありまして。いかにも高校の部活に有りそうな一
幕です。3年生の去就の問題、3年生でなくても部員が辞める問題、普通に
「そこら辺に転がっている」人生の1コマです。本作の場合、件の3年生が
「本気になれない」原因の理由だてが至って「普通」で、「そりゃそうだろ
う」と納得する理由を語らせたヘッドスタッフが素晴らしいのは異論無いの
ですが、ヘッドスタッフが振った問題が「片付いていない」まま作品が終わっ
てしまうんです。件の「問題」は、現実では「絶対に解決しない」問題なん
です、高校という教育機関の中で行われる部活動なら。ですが、フィクショ
ンたる「アニメ」の中でなら「問題を解決する」ことが出来まして、ヘッド
スタッフがそれを選択しなかったのかor思い付かなかったのか、、、。そこ
だけが唯一の残念。せめて目途だけでも立ててほしかった。
 即ち、本人が納得して「以上、終了」と宣言すれば(宣言させれば)良い
んです。「片付かない」なら「片付ければ」良いんです、片付いていないま
まにしておくからモヤモヤする。
 コーチも「3年生が何かおかしい」とは気付いているんですが、「何がお
かしいのか?」かは子供を教えたことがないんで分からないんですね、そりゃ
そうだ。でも3年生の「おかしな雰囲気」は部全体に伝播する。結局残りの
3年生が自力で解決する形になりましたが、件の3年生については自己解決
したのか他力解決できたのか、最後まで触れられないままなのが実に残念。
「どこかで道を分かつ」ことが必定なら、“分岐点”まで仲間が見送りをし
てやる時間を設けて「引導を渡してやる」のもまた人生経験です、社会に出
たらそんなのは日常茶飯事です。“分岐点”を自力にせよ仲間の助力にせよ、
見つけだして「自分が納得しないと」後を引きずるのは想像に難くないです。
“それ”をやったら本人も他人も「以上、終了」に出来るんですが、、、。
実に残念。
 私見ですが、件の3年生の場合、プレーヤーとして途中離脱したとしても、
指導者としてはうってつけの人材ではなかろうかと考えます。プレーヤーと
して成長も挫折も知っている、プレーヤーとして楽しいことも辛いことも知っ
ている。部の成長のど真ん中にいて、後輩達の事も分かる。自分が指導を請
う年長者も当面はいる。人望もある。こういう人物が指導者に向いていると
考えます。この3年生とコーチの2人で、主人公の代は本当に県代表になる
かもしれない、、、とさえ考える。大学に進学できないということは就職す
るのだろうと思われますが、家業が植木屋さんということは跡を継ぐのかな?
だとすると、卒部する同級生の中で一番部に近いところ(物理的に)に居続
ける事が出来るわけで、在部生としてもこれ以上ない最高のコーチですよ。
先輩っつーか「兄貴」ですね。

 希望を託した後輩達が過去に敵わなかったライバル達に挑んでいくドラマ
を是非観てみたい、、、。でも、そこまで描く時間は取れないでしょうし、
本作は菅平合宿までですから3年生が卒部するところまでそもそも行かない
んですが、「以上、終了」は欲しかった、見たかった。

#そうすると、あのマネージャも卒部するのか。


「高校ラグビーと言えば花園」とは前述の通り。スクールウォーズも最後は
花園ラグビー場(当時、近鉄花園ラグビー場)でした、実写ドラマの高校ラ
グビーのお話です。麻上がガキの頃の時代です。因みに、アニメで高校ラグ
ビーの作品というのは本作が初めてだそうで、そう言われればスクールウォー
ズから本作まで、アニメでも実写でも、いわゆる「ラグビーもの」って覚え
がないな、、、と。なので他の学校スポーツに置き換えて筆を進めます(比
較対象が無い)。
 ざっくり表現すると、本作は“ちょいと緩い”スポコンです。こういう話
は、“前座”が地区予選とか都道府県予選で、“真打ち”が全国大会だった
りして、勝ち進んでいく度に相手が強くなり(いわゆる天下一武闘会方式)、
苦労の末に優勝する、あるいは都道府県の代表になって「さあいくぞ」とい
う雰囲気で「第一部 完」というのがお約束。
 しかし本作は全く違います。公式試合がありません、あって練習試合。練
習試合を学校でやるか菅平合宿でやるかの違いだけ。

#そのチョイスが天晴れ。よくその決断に至った、素晴らしい。

「トーナメントを勝ち進む」と言うよりは「ぶつかり稽古、かかり稽古」。
天下一舞踏会方式に慣れた方には物足りないでしょうが、物足りないと思わ
れた方は“目が肥えていない”。やってることor内容は天下一舞踏会方式並、
むしろ、トーナメント式で描くに際して生ずる制約が無くなり、1試合をじっ
くり掘り下げています。トーナメント式で描いたとて、結局同じ様な粗筋に
なるし、なんなら時間が掛かる分掘り下げが難しくなります。くじ運にもよ
りますが、いきなり強豪校と当てると御都合主義が怪しくなります。それな
ら、トーナメント式にしないのは非常に合理的です。練習試合ならいきなり
強豪校と試合してもおかしくありません(相手が受けてくれればOK)。反
作用で、試合数の設定が少なくなり、本作もまともに描けているのは4試合
と少ない(実際はまだある)ですが、見応えとしては抜群です。練習試合で
すが、やってることは県予選並です。天下一舞踏会方式だけが見せ方ではな
いと如実に示しています。

 よくやったヘッドスタッフ。面白かった。


##黒田さん(中の人)や。“そのスジ”の方ですか? 経験者だったらさ
  もありなんですが、知識無しであの芝居は出来ないでしょ。低音だけで
  あのセリフは出ないでしょ。それを演じるのが役者なんでしょうが、

            「役者、かくあるべし」。


******敵機襲来!敵機襲来! バルキリー隊全機スクランブル******
                         karura@occn.zaq.ne.jp
アニメアールを応援しています           麻上 迦楼羅(竹田 貴博)
********六星占術だと、私は土星人になるらしい***********