ハンガリー国立歌劇場:魔笛
2006.11.25 Hungarian State Opera House (Budapest)
Janos Kovacs (Cond), Janos Szikora (Dir)
Laszlo Polgar (Sarastro), Zoltan Nyari (Tamino)
Anna Herczenik (Pamina), Beata Trubin (Queen of the Night)
Zsolt Molnar (Papageno), Zita Varadi (Papagena)
Sandor Kecskes (Monostatos), Istvan Berczelly (Speaker)
Szilvia Ralik, Andrea Melath, Erika Gal (Three Ladies)
1. Mozart: The Magic Flute (Hungarian version)
今年は生誕250年記念のモーツァルトイヤーですが,ブダペストのオペラ座
ではその締め括りイベントとして「モーツァルト祭り」が11月末に約1週間
にわたって開催されます。レクイエムの他,近年ハンガリー国立歌劇場が
取り上げてきた主要オペラ(魔笛,皇帝ティートの慈悲,フィガロの結婚,
後宮からの誘拐,コシ・ファン・トゥッテ,ドン・ジョヴァンニ)が一挙に
連続上演されます。
他が原語による上演なのに対し,この「魔笛」は近年ずっとエルケル劇場の
レパートリーとしてハンガリー語翻訳版で上演されてきました。今シーズン
オペラ座の方に場所を移すにあたり,他のオペラと同様歌詞を原語に変えて
くれることを期待したのですが,結局ハンガリー語のままで,演出,舞台も
2年前エルケル劇場で見たものと基本的に全く同じでした。そうだろうとは
薄々思っていましたので,指揮がコヴァーチのおっちゃんでもあるし,もし
ポルガールが出演しなければチケットは買ってなかったでしょう。
その通り,この日の収穫は何といってもポルガール・ラースローの美声
(バスにそういう表現も変ですかね)が生で聴けたこと。国外での活動が
多いのでハンガリーでは年に数回しかチャンスがありませんが,よく響き,
堂々として説得力のあるその美声は群を抜いて素晴らしかったです。意外
とスリムなその体型の,いったいどこからそのバスが響いてくるのか,
全く不思議です。
2年前はハンガリー語の上,歌手がイマイチだったのでがっかりした記憶が
ありますが,今日はポルガールに限らず歌手陣が総じて優れていて大当たり
の日でした。タミーノは少々薄っぺら,パミーナは少々感情過多,パパゲー
ノはイメージに合わないダンディなモテ男風の外見ながら,いずれも歌唱力
は抜群に良かったです。3人の侍女も普段は各々主役を張るトップクラス
なので,舞台が非常に華やかでした。夜の女王は普段オーストリアで活動
しているそうで,今回はこの魔笛にだけ出演の予定ですが,まずまず無難な
コロラトゥーラといったところ。その前の部分の方が良かったので,上手い
歌手ではあるのでしょう。このアリアは有名な超絶技巧なので,まず無難
にこなせば大概は夜の女王が一番大きい拍手をさらっていくのですが,
さすがに今日はポルガールはさらに大きい拍手喝采を浴びていました。
しかし今日の出演者は,パミーナがちょっとぽっちゃり気味だった以外は
皆スリムな体型で,歌手の力量と体重はやっぱり無関係なんだな,と,
認識をあらたにしました。
演出は,何度見てもやっぱり,かなりヘンです。湖沿いの東屋風の屋内で
見えない大蛇に恐れおののくタミーノ。魔笛の音に引き寄せられて動物たち
が出てくる代わりに,仮面をかぶり中世の衣装に身を包んだ男女がダンス
を踊ります。3人の侍女がタミーノに見せるパミーナの絵は,観客にもよく
見えるよう特大の肖像画になっています。舞台の両脇には2階建てでオペラ
座のボックス席が設けられ,中世貴族風の人々が舞台を見ている,すなわち
「劇場内劇場」のような形を取っています。その中世貴族たちも最後は立ち
上がり,一緒になって歌いますので,ああ,合唱団の人たちだったのね,
と気付きます。ラストは一気に年月が流れ,老境のタミーノとパミーナが
寄り添っているところに,何十人もの子供を引き連れたパパゲーノ,パパゲ
ーナが乱入してきて走り回り,幕。タミーノとパミーナはパパゲーノたちが
「パ・パ・パ」と歌っている間,裏で大急ぎで老けメイクに変えているの
ですよね,ご苦労さんです。しかしこの二人は最後のカーテンコールはその
老け顔メイクで出なければならないので,ちょっと気の毒に思いました。
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はっしー@ぶだぺしゅと 演奏会備忘録
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Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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