2006.11.15 Hungarian State Opera House (Budapest)
Geza Torok (Cond), Attila Vidnyanszky (Dir)
Eva Marton (Stepmother), Eva Batori (Jenufa)
Attila Wendler (Laca), Attila Kiss B. (Steva)
Tamara Takacs (Grandmother), Janos Gurban (Foreman of the mill)
Gabor Kenesey (Mayor), Jutta Bokor (Mayor's wife)
Katalin Gemes (Karolka), Zita Varadi (Jano)
1. Janacek: Jenufa

「トスカ」一本で日本ツアーを敢行したばかりのハンガリー国立歌劇場
ですが,ブダペストフィルはまだ日本ツアー中ですので,主力奏者は現在
どっちにいるのでしょう?何にせよGood Newsはコヴァーチおじさんが
まだ日本にいるということでしょうか。(言いすぎ?)

今日の目玉はハンガリーが世界に誇るドラマチックソプラノ,エヴァ・
マルトンの見参です。今シーズンはこの「イエヌーファ」4公演しか出演
しません。他の歌手の顔ぶれもなかなか粒ぞろいだったにもかかわらず,
客席には空席が目立ちました。やはりヤナーチェクのチェコ語オペラなぞ
聴こうという酔狂な人はブダペストでも少数派なのでしょうか?

かくいう私も「イエヌーファ」は名前だけで,実際に聴くのも見るのも
実は今日が初めてでした。よって聴きどころのポイントなどは全くわから
ないのですが,民謡を基調にしたとおぼしき旋律と素朴なオーケストレー
ションで,不協和音もそんなになく,比較的とっつきやすい曲でした。
とはいえあらすじは,継子の結婚の障害になると思い込み,孫を川に投げ
込んで殺すという,昨今はシャレにもならない内容の悲劇であり,音楽は
暗いというよりどこか切ないです。

やはりエヴァ・マルトンの存在感が群を抜いておりました。第一幕こそ
出番があまりないこともあり,声があまり通らず「あれ?」という感じ
だったのですが,第二幕以降はあまりにも劇的な熱唱がまさに独壇場。
この日はファンが多数詰めかけていたのか,熱狂的な拍手がなかなか
鳴り止みませんでした。イエヌーファ役のバトリは前に「マクベス夫人」
や「蝶々夫人」でも見ましたが(どっちも未亡人役ですな),マルトンと
十分に渡り合う堂々とした歌いっぷり。5月のカルメンではドン・ホセを
歌っていたヴェンドラーは,このラツァ役もキャラクター的に合い,
なかなか堂に入っていました。「バーンク・バーン」のオペラ映画
(マルトンやアンドレア・ロシュトも出演しています)に主演している
キシュ・B・アッティラを生では初めて見たのですが,歌手陣の中では
ずば抜けてよく通る声で,芸達者な歌を聴かせていました。親方役は
先日のマイスタージンガーのザックス,カロルカ役はチェネレントラ
でしたね。歌手陣は歌劇場の主力を揃えた,なかなかの顔ぶれでした。

大道具はシンプルながらも大がかりなもので,いつもの人海戦術で100名
以上舞台に上ったと思ったら,最後は主役の3人だけを残し,まとめて
床ごと沈んでいくというなかなか斬新なアイデアに意表をつかれました。
氷漬けになった赤ん坊の死体(しかしそんなものを結婚式に持って来る
なよ)は,よく見ると天使の人形が埋まっており,最後はその手に灯が
ともって,ラストの穏やかな赦しを印象付けていました。

オケの演奏もよくがんばっており,第三幕などは切なさがよく出ていま
したが,ヴァイオリンソロがちょっと…。コンマスは日本に行っていた
のでしょうかね。

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はっしー@ぶだぺしゅと 演奏会備忘録
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