2006.07.26 Palace of Arts, Bartok National Concert Hall (Budapest)
Concert hall performance by Theater an der Wien
Bertrand de Billy / Vienna Radio Symphony Orchestra
Arnold Schoenberg Choir
Gerald Finley (Don Giovanni), Attila Jun (Commendatore)
Myrto Papatanasiu (Donna Anna), Mathias Zachariassen (Don Ottavio)
Heidi Brunner (Donna Elvira), Hanno Muller-Brachmann (Leporello)
Markus Butter (Masetto), Adriane Queiroz (Zerlina)
1. Mozart: Don Giovanni, Opera in two acts, K. 527

クラングボーゲン音楽祭の一環としてつい1週間前にアン・デア・ウィーン
劇場にてプレミエだった新演出が,オフシーズンのブダペストに何故か
やって来ました。歌手,指揮者,オケ,合唱団はウィーンでの上演と全く
同じ顔ぶれだったようです。このところこの国立コンサートホールでは
「コンサートホールにおけるオペラ」と称した出し物がよく上演されて
いますが,これもその一つで,オケは客席から一段下がったピットに配置
され,舞台の上には舞台装置と呼べる大道具は何もなく,この日の場合は
レチタティーヴォ伴奏用のチェンバロとチェロ独奏,あとはパイプ椅子が
4つずつ左右に置いてあるだけでした。歌手は舞台衣装と言うよりは普通の
演奏会用衣装で登場し,自分の出番でない間は椅子に座っているか,又は
舞台袖に引っ込んでいましたが,出番ではちゃんと普通に身振り手振りを
交えた演技をしていましたので,プロットを知っていれば十分話の筋が
追える程度にはオーソドックスな演出でした。とにかく歌手もオケもその
演奏レベルが非常に高水準でバランスが取れていて,やはりウィーンは
いつも聴いているブダペストの歌劇場とは一味も二味も違う,というのを
痛感しました。誰が凄かったというより,どの歌手も声量と歌唱演技力に
おいて全く申し分ない上に,それぞれ役作りの差別化が徹底していて,
比較で論ずるのは全く無意味,皆一様に素晴らしかったというより他
なかったです。その中でも特にやはりドン・ジョヴァンニとレポレロは
最後にひときわ盛大な拍手を受けていました。

後でアン・デア・ウィーン劇場のWebサイトにある写真を見てみたら,
このドン・ジョヴァンニのウィーンにおける舞台装置はかなりモダン
で斬新なものであることがわかり,もし先にウィーンで見ていたら,
おそらく非常に奇抜で訳わからん演出という印象を持ったのかも知れ
ません。多分,歌手個人の演技はどちらの場合でもほとんど変わらない
のでしょう。大道具が全くないほうがむしろオーソドックスな印象を
受けたということは,オペラの演出っていったい何なのだろうという
根源的な疑問に今さらながら気付いてしまった今日この頃でした。

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はっしー@ぶだぺしゅと

演奏会備忘録 <http://www.ne.jp/asahi/hot/space/concert/>