なんでも例のジャーナリストが言うには、
交通反則通告制度の適用のある違反は「すみやかに」告知をしなければいけな
いから現行犯でないと取締れないので自動速度取締装置では摘発できない
とか。

# これは又聞きなので本当に例のジャーナリストが言っているのかどうかは保
 証しません。

しかし、「すみやかに」というのは「直ちに」と「遅滞なく」の間ではある
が、訓示的な意味合いしかないのが通例というのが法律学小事典の付録の用語
集(内閣法制局)の解説。
それに条文を読むと、

道路交通法126条1項 警察官は、反則者があると認めるときは、次に掲げる場
合を除き、その者に対し、速やかに、反則行為となるべき事実の要旨及び当該
反則行為が属する反則行為の種別並びにその者が次条第一項前段の規定による
通告を受けるための出頭の期日及び場所を書面で告知するものとする。ただ
し、出頭の期日及び場所の告知は、その必要がないと認めるときは、この限り
でない。
一  その者の居所又は氏名が明らかでないとき。
二  その者が逃亡するおそれがあるとき。 

となっていて「反則者があると認めるとき」は別に「反則行為たる違反を現認
したとき」とは限らないのだから、後で自動速度取締装置の撮影画像から違反
の存在を確認してその運転者を捜査により特定したときともって「反則者があ
ると認めるとき」として何の問題もないと思います。
この点について、立花書房刊「注釈特別刑法第六巻交通法通信法編I」伊藤他
編によれば、
「反則者があると認めるとき」告知する。反則行為があると認めても、前条二
項の反則者でない場合は告知できない。警察官は反則行為をした者が反則者で
あることを確認する必要があるわけである。「すみやかに」とは、告知をする
のに要する合理的時間内にという意味であり、右確認のために告知が反則行為
の現認時以後に現認場所以外でなされても右の合理的時間内であれば、差しつ
かえない。
とあり、ここに言う「反則者であることを確認する」というのは、125条2項各
号の例外事由に該当しないことを確認することを念頭においた記述で、違反者
と違反自体は現行犯である場合ではありますが、少なくとも「反則者があると
認めるとき」が常に違反の現認時の現認場所であるわけではないということを
示しています。

さらに、
問題は、どの時点において、右の事由(126条1項各号。筆者註。)があれば告
知が不要になるかという点である。(中略)警察官が反則者があると認めた時
点である(中略)としよう。(中略)反則行為に当たる罪を犯した者を現行犯
人逮捕したときなど、その逮捕後に「反則者がある」と認めたときに右の各事
由がないと認められれば告知を要する。この場合は、特段の事情がない限り、
釈放と同時にこれを行うのが妥当である。
という記述があり、126条1項各号に定める事由により告知不要となる場合でな
いことが違反の現認時よりも「後で判明した」場合に、違反の現認場所と異な
る場所で告知することがあることを述べています。

だいたい、駐車違反は「現認時以後現認場所以外で通告する」場合が多いので
すが、あれも「出頭して駐車したのが自分だと認めて初めて反則者が特定す
る」のでその時点で「反則者があると認めるとき」になるからだと思います。

であれば、「反則者があると認めるとき」は「現に違反している時」である必
要がないのは確実です。その上で、「告知を行うのは現認場所でなくてもいい
が違反自体は違反時に現認することを要する」とする根拠がまるでない以上、
「違反事実自体も現認することを要せず、事後、違反現場以外において警察官
が反則者があると認めればそこから合理的時間内に告知をすれば足りる」と解
するべきです。

とまあそういうわけで、反則通告制度の適用がある速度違反は自動速度取締装
置では摘発できないというのはまったく根拠がないと思うのですが、この点に
ついて「納得のいく」根拠って何かありますか?

-- 
SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp