なぞ



 一般にはあまり知られていないことなのですが、1967年メッカの近くにある遺跡から世界で最も古い聖書が発掘されました。
その聖書には、現存するどの聖書にも記載されていない章がありました。
以下にその章の概略を述べますと

 かつてベツレヘムに老いた母と二人の息子が住んでいた。
 兄はまじめな男だったが、ストイックなところがあった。
 母がまちがったことをすると
 「馬鹿! なにやってるんだ。
  そうじゃない、こうだ。」
 そう言って母を怒鳴りつけた。
 母は兄の方は避けがちだった。
 弟は優しい男だった。
 母がまちがったことを言えば
 「そうだよ、お母さんの言う通りだ。」
 母がまちがったことをすれば
 「それでいいんだよ、お母さん。」
 と言って、パチパチと拍手した。
 母は弟を好いていた。
 
 ある日、神が天からこの家族を観察していた。
 しばらく観察したあと、神は
 「親を馬鹿にしている!」
 と激怒して、息子の片方に雷の鉄槌を下した。
 
この聖書はかなり痛みが激しく、この後のページは欠落していた。
このため現代では、もはや、いずれの息子に雷の鉄槌が下されたか知ることはできない。 

おそらく、将来も知られることはなく、とわのなぞとなるであろう。