# 法律論として議論するような内容は何もないですが。
 大体終っているみたいだけど疑問に対する明確な回答がないので参考に。

At Mon, 15 Dec 2003 13:07:56 +0900,
in the message, <brjc2v$fj9$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
"Kouichi Niimi" <niimi@gld.mmtr.or.jp> wrote
>"ABE Keisuke" <koabe@mcc.sst.ne.jp> wrote in message news:koabe-DC9202.21322414122003@news01.sakura.ne.jp...
>> 「ウェブログ@ことのは」に「『引用』は無断でやるのが当たり前」
>> という記事が掲載されています。
>
>う〜ん、著作権法で「引用」に関することって第三十二条だと
>思うんですが、「引用は無断でするものである」なんてどこにも
>書いてないんですけど……

書いてませんね。

法律的には、「引用は著作権侵害にならない」だけ。
そしてその法論理的帰結として「引用にあたって著作権者の許諾は不要」で
す。
しかし、それは引用を無断で「やる」ことが「当り前」という意味ではあり
ません。
法律的に言えるのは、「引用は許諾不要」ということまでです。
つまり「現行著作権法上は」引用は無断で「できる」だけです。

「できる」ということと実際に「やる」ということとは別問題です。
義務でない行為を「やる」かどうかは「法律の関知するところではない」で
す。
つまり、「無断でやるのが当り前」という話は法論理的には出てきません。
言ってしまえば、「実際に無断でやるかどうかは法律上はどうでもいい」ので
す。
引用が無断で「やる」ものかどうかなど法律の知ったこっちゃないのです。
だから「引用は無断でするものである、と著作権法にちゃんと書いてありま
す。」なんてことはありません
(「公正な慣行」であるかどうかは問題になるかも知れないけど、それは既成
 事実に対する法的評価の問題であってつまり法律よりも事実の方が先。)。

つまり、

At Tue, 16 Dec 2003 20:39:21 +0900,
in the message, <brmqt2$dcq$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
"Kouichi Niimi" <niimi@gld.mmtr.or.jp> wrote
>私が言いたかったことは、「引用は法三十二条にそって、誰
>でも自由に行うことができる。ただその際に断りを入れるか
>入れないか(無断で行うのか断りを入れてから行うか)は、法
>第三十二条に記載されていない。だから著作権法には「引
>用は無断でするものである」なんて書いてないぞ」って言い
>たかっただけ。

ということ。
書いてあるのは「できる」であって「やる(=する)」ではないです。

# ちなみに法律の表現としては、「できる」は裁量行為、「する」は羈束行為
 であることが多い。


……とまあ厳密に言えばこういうことなんだけど、言いたいことは解るから別
にいいんじゃないのかと思いますが。
実際問題として、無断でできる場合一々断らずに無断でやるのは「当り前」と
言ってもいいだろうし、現実にも無断でやることが圧倒的に多いだろうし
(法律論としては不正確なだけで。)。
そもそも、著作権法成立以前から引用というのは存在したはずだし、その場合
無断が当然だっただろうし、著作権制定時に立法者も当然それを分っていただ
ろう。


……むしろそんなことよりも今時、「新聞社など」が「無断引用禁止」なんて
言ってるという方がよほど事実誤認じゃないの?と思いますけど。
あたしゃここ最近まともな出版物ではそんな記述は見たことないよ
(ウェブ上のおかしな文章ならよくあるけど。:-P)。
無断「複製・転載」禁止ってのはありますけど。
その点において主張の前提事実が間違っているから大したものじゃないとは思
うけどね
(経験則としてはこういう人に限って、自分が引用するときに「公正な慣行」
 に従っていないあるいは「正当な目的」でない引用
 (これがそもそも「引用」かどうかはさておき。)
 をしておきながら「引用だからいいのだ」とか言ったりするんだよね。)。

# 引用が許諾不要なんてのは法律抜きでも常識の部類だと思いますが。
 一部の非常識な人が許諾が必要だと思いこんでいるということはあるかも知
 れないけど、世間の多くの人は必要だなんて思ってないと思う。
 そう考えれば、「今更言うほどのもんでも取立てて評価するほどのもんでも
 ない」と思いますけどね。
 新聞社等が何と言っていたとしても、「それに従う人間の方がずっと少な
 い」だろう。


ところで、

At Wed, 17 Dec 2003 13:10:55 +0900,
in the message, <brol08$e0h$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
"Kouichi Niimi" <niimi@gld.mmtr.or.jp> wrote
>あ、それは私も賛同します。引用は自由に行えるもので
>すからね。(もちろん「引用」ならば、ですが ^^;)

上でもちょっと触れていますが、理論的には議論の余地があると思います。

著作権法上引用が認められるのは、公正な慣行に従いかつ正当な目的の場合の
みです。
とすれば、「公正な慣行に従っていない」あるいは「目的が正当でない」「引
用」は著作権法上認められないと考えることができます。
その場合、論理的には「引用であっても自由ではない」です。

これは、「正当な慣行に従いかつ目的が正当」であることを「引用の要件」と
考えるか「引用の適法性の要件」と考えるかという問題。

# 結論はどっちでも一緒なんだけど、適法性の要件と読む方が文言には忠実。

-- 
SUZUKI Wataru
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