no oneさんの<46f4c031$0$288$44c9b20d@news2.asahi-net.or.jp>から
>略述挨拶
>
>    昔々、おりえんと という地方に、やまたい國という國がございました。
>この國の人たちは、たいそう礼儀正しい人達で、小さな子供達でさえ、
>いろいろな場面で、その場面で決まっている正しい挨拶をきちっとするのでした。
>朝の「お早うございます」から、新人社員の「右も左もわからないふつつか者ですが、 
>
>ご指導よろしくお願いします」から、デビューアイドルの「一生懸命頑張ります。
>応援よろしくね」から、「儲かりまっか」から、ある種の人達の「おひかえなすって
>云々」まで、その場その場で決まった挨拶をきちっとこなすのです。
>挨拶だけではありません。
>この國の校長先生が、数百人の生徒達の前で、一時間にわたって
>美しい、立派な、道徳と倫理の訓辞をたれたとします。
>この一時間の訓辞のなかに、この校長先生の言葉は一言もありません。
>すべてが、決まり切った言葉、つまり、挨拶なのです。
>その晩、この校長先生は、すとりっぷ劇場のかぶりつきにいたりします。
>
>    この國は、三つの部族からなりたっておりました。
>おばちゃん部族と、おじちゃん部族と、やんぐ部族です。
>おばちゃん部族は、この伝統をそれはそれは気に入っておりましたが、
>おじちゃん部族と、やんぐ部族は、「毎日毎日ぼくらは挨拶の、上で焼かれて
>いやんなっちゃうよ〜〜〜」かな・・・なんて思ったりもしていたんですねぇ。
>    ある朝、この國一番の論理学者が、「決まった場面で話される決まった
>セリフは、abbreviation つまり略述が可能である」という
>理論を発表しちゃったんです。
>ここまでなら何となく解ったりもするのですが、さらに驚くべきことに、
>このabbreviation は、場面場面ごとに違ったものを用意しても、
>あらゆる場面で共通のただ一個のものを使っても、論理的には同等であると、
>そうおっしゃるのです。
>あるいはまた、それぞれの場面で、このabbreviation は何を採用しても 
>
>よいわけですから、すべての場面でたまたま同じabbreviatioを
>採用したって構わないよ、とまあそいうことなんですねぇ。
>おばちゃん部族のしかめっ面をよそに、おじちゃん部族とやんぐ部族は、
>ここぞとばかりに、「略述挨拶」法案を國会で通しちゃったんです。
>そうして、この一個の「略述挨拶」を何にするかで、一般公募が行なわれることに
>なりました。
>        ・・・
>結果は、一番多かった「はいる ひっとらー」が採用されました。
>というのは、それは、げるまん國で太古から採用されていた略述挨拶だった
>からなんです。この合理主義の民族は、かの論理学者の主張せんとするところを、
>はじめっから理解していたと、まあこういうことなんですねぇ。
>やまたい國の人達みたいに「はいる ひっとらー 甲の1番」とか
>「はいる ひっとらー 乙の8番」とかいうんじゃあなくって、
>りりしく、毅然と「はいる ひっとらー」と叫ぶ、これが良いんですねえ。
>
>    それからというもの、朝会えば「はいる ひっとらー」、
>歓迎会では「はいる ひっとらー」、送別会でも「はいる ひっとらー」。
>結婚式でも「はいる ひっとらー」、葬式でも「はいる ひっとらー」。
>挨拶は略述化され、人々はとてもらくになりました。
>
>    ところが、です。
>世の中には、この決まった正しい挨拶をせずに、自分の言葉を語る奴らが
>いたんですねえ。
>例えば、お向かいのでか頭ソーセキくんとか、あるいはお隣の
>青白きリューノスケちゃんとか、はたまたお二階のユキオ・マッチョ・ミシマの
>やつとかですねえ。
>おばちゃん部族にとっては、こういう連中は、まっこと奇人・変人・変わり者
>なんですねえ。おばちゃん部族は、こういう人達をみると、待ってましたと、
>「その挨拶は正しくない。正しい挨拶はこれだ!」と、正義のロボコップ、
>いや、正しい指導をおこなったんですねぇ。
>手間をいとわずに、その場その場で注意していたんですけどね、
>そのうち、大きな動きは、これも「略述注意」にしようということになりました。
>また一般公募が行われ、一番多かった
>「キサマーッ それでも大日本帝國軍人か!」が採用されたんです。
>というのは、これがとてもパンチのあるセリフだったからなんですねぇ。
>
>    それからというもの、みんな顔を合わせれば「はいる ひっとらー」と
>決められた正しい挨拶をし、この決められた正しい挨拶をせずに、自分の言葉で
>ものを語る人達には、「キサマーッ それでも大日本帝國軍人か!」という、
>眼から火の出るような熱い熱い愛のビンタが、いや・・・その・・・注意が
>降り注がれるようになったんですねえ。