河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

もっとも数学と物理を解っているSF作家、Geg Eganの短編集。その
分だけ小説書くのが下手って説もあるが、書いていくうちにうまく
なるとは思う。なんだが、この短編集は、ちょっと古いのか。

「オラクル」で、いきなり、ゲーデルの不完全性定理の証明とか書
いちゃう。しかも、それはAIが人間にとって代われないという文脈
で出て来る。そして、イーガンは、その立場にはないという、そう
いうことをやる人ですね。

この人の問題意識は結構僕に近くて、量子力学の多世界モデルと、
意識の関係がたくさん出て来る。表題作の「一人っ子」Singleton
も、その一つ。でも、分岐があるかないかは外からは判らない。
だから、内からも判らない。でも、差があると思っているみたい
だね。そのあたりの気分を共有するのは難しい。なので、一人っ子
はあまり入り込めませんでした。

面白かったのは「ルミナス」だな。整数論の不完全性を戦争と見る
みたいな話でさ。ここで、量子論を持って来ないのは勿体無いだろ!
と思わないでもなかったですが、そうすると、こういう展開には
出来ないので仕方がないか。ジオファントス方程式とかで構成する
つもりなんだろうけど、実際の数値が当てはまった段階でアウト
なので、計算すれば値が決るってな感じにはならないはず。でも、
整数論的量子論とかがあったら面白い。

「行動原理」「真心」は、自分の心っていうか性格をいじり廻す
話。すみません。つまらないです。でもアイデアは面白い。人間
の心なんて、所詮は機械的なものなのさって感じ。ローレンツの
「攻撃」みたいな話の延長でもある。

決断者はミンスキーの「心の社会」をベースにしたものらしいんで
すが、面白くなかったです。でも、AI研究者なら読むべきだろ?

「ふたりの距離」は、サイバーな話だが、実は恋愛小説でした。
これはうまく書けているんじゃなかろうか?

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科