Path: ccsf.homeunix.org!CALA-MUZIK!newsfeed.media.kyoto-u.ac.jp!news.tains.tohoku.ac.jp!news-sv.sinet!nadesico.cc.tsukuba.ac.jp!gama.is.tsukuba.ac.jp!ie.u-ryukyu.ac.jp!not-for-mail From: kono@ie.u-ryukyu.ac.jp (Shinji KONO) Newsgroups: fj.sci.math Subject: =?ISO-2022-JP?B?GyRCJVQlPyU0JWklOSRORGpNfRsoQg==?= Date: Sat, 23 Sep 2006 01:51:26 +0000 (UTC) Organization: Information Engineering, University of the Ryukyus Lines: 72 Message-ID: <3993209news.pl@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> References: <3993205news.pl@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> NNTP-Posting-Host: insigna.ie.u-ryukyu.ac.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset="iso-2022-jp" Content-Transfer-Encoding: 7bit X-Trace: naha.ie.u-ryukyu.ac.jp 1158976286 4277 133.13.48.71 (23 Sep 2006 01:51:26 GMT) X-Complaints-To: news-admin@ie.u-ryukyu.ac.jp NNTP-Posting-Date: Sat, 23 Sep 2006 01:51:26 +0000 (UTC) X-Image-URL: http://www.ie.u-ryukyu.ac.jp/~kono/skono.gif Fcc: send X-Newsreader: news.pl 1.17 2005/05/10 01:26:04 Content-ID: <9378.1158976135.1@insigna.ie.u-ryukyu.ac.jp> Xref: ccsf.homeunix.org fj.sci.math:2073 河野真治 @ 琉球大学情報工学です。 昔、fj で延々議論したことがある。そもそも、  ピタゴラスの定理って定理なのか? まぁ、簡単に言えば「正しい言明、つまり、証明できるもの(ある いは公理)なのか?」ってこと。これは、実は簡単にわかる。証明で きません。だって、反例があるんだもの。非ユークリッド幾何学と いう...  dz^2 > dx^2 + dy^2 となる幾何学があるわけさ。だからピタゴラスの定理ってのは、ど っちかって言うと、「必要に応じてする仮定」あるいは「理論の前 提」なわけだ。 じゃぁ、なんで、世の中には「ピタゴラスの定理の証明」なるもの がたくさんあるのか? つまり、ユークリッド幾何学を特徴づける、 dz^2 = dx^2 + dy^2 よりも基本的な命題があるかってことだよね。 一般的には、第五公準(平行線は唯一唯一つ)ってのがそうだと言わ れてます。でも、そもそも直線ってなんだ? もしかして、二点の最 短距離とか言う? じゃぁ、三角形の形と長さを保存する回転の存在 は? そうすれば、良く知られている図での証明が出来る。要は、何 か他の定理とか公理に押しつければ良い。回転とか平行線とかがそ れに当たるわけ。 僕が好きな証明は、こんな奴。  l = sin θ * sin θ + cos θ * con θ をθで微分すると...  2 sin θ * cos θ - 2 cos θ * sin θ = 0 で、定数だってことがわかって、これ(と境界条件)から、dz^2 = dx^ 2 + dy^2とするって奴。 この方法は、実は、無限小回転(つまり三角函数の微分の仕方)を  0 -1  1 0 という行列だと仮定することと同じ。なので、回転に対する公理を うまく構築すれば、ピタゴラスの定理を証明することは可能です。 なんだが、そのあたりで結構異論がでた。なんでなのかは良くわか らない。そもそも何を議論していたんだろう? 割と当り前なことを 書いていたはずなんだが... 他の人に「河野さんは何んであんなに がんばっているの?」とか言われて通じてないことに気が付いたっ てなところ。 sin θ, cons θを、無限級数の和として定義してやって、それを 使ってユークリッド回転を定義するなんて言うのを提案していた人 もいますが、定義の必然性に乏しいのが欠点だな。もちろん、図を 書いて、その無限和が、円弧の形に近いというのを示すことは出来 るんだけど... それは、三角形の回転で証明するのに後退している 気がする。島内先生の「数学の基礎」はそんな方法だったと思って 探したんだけど、どうも違うみたい。 とかなんとか考えると、やっぱり、ユークリッド幾何ってのはダメ で、多様体上の計量を定義する関数を与えるっていう解析幾何的手 法が良いことがわかります。そうすれば、「ピタゴラスの定理、あ るいは、ユークリッド幾何は、特定の計量を持つ幾何」だってこと で終るので。(つまらん...) ちなみに、  dz^2 = dx^2 - dy^2 とかするのが、相対論(ミンコフスキー幾何)なので、相対論の理論 的正しさってのは、ユークリッド幾何の理論的正しさと、ほとんど 同じだってこともわかります。なので、「相対論が間違っている( 内部矛盾がある)」ってのが間違いだってのが簡単にわかります。 円の代わりに双曲線を使うわけだね。 --- Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus 河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科