河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

久しぶりに暇なんで、数学の話をもう一つ。僕が使った本はシュワ
ルツの代数学。これも、あんまり良い選択肢とは言えなかったんだ
が... 

複素解析なんていうださださな名前が付いているが、数学のもっと
も美しい理論の一つ。予定調和の嵐というか、ハッピーエンドの映
画というか、理論自体の持つ幾何学的美しさってのがある。それに
「あんまり難しくない」しね。計算が易しいので。理論的に美しく、
しかも、成果があり、実用性もある、ってな数学理論は他に類を見
ないとも言えると思う。

理系なら大学初年度で教えるはずだが... 面白く教えてくれるとこ
ろは少ないよね。大学の授業で聞いた時には、つまらないなと思い
ました。一つは、同時に教えるものが、数学のもっとも分かりにく
く、つまらない概念である「εδ論法」だからだと思う。胡散臭く
て、実は、役に立たなくて、それでいて、計算が面倒というしろも
の... 今だと、もっと便利な無限小を扱う手法があるのにね。まぁ、
超限解析教えるわけにいかないのはそうなんだろうけど。

複素解析自体は、複素数が二つの実数からなるベクトルだというの
がわかると、二次元ベクトルから二次元ベクトルへの関数を調べる
のとほとんど同じだというのがわかります。ってことは、つまり、
二次元の曲面の傾きみたいなものだ。等高線の入った地図みたいな
もの。で、道を歩いた結果が積分で、歩き方が微分だってな感じ。
x + Δx ってのが、一つの地点から、廻りをぐるっと見回す(Δx 
はベクトルだから) というように見えると、複素解析の基本は理解
できたことになる。

「山の斜面は平面だから平面の方程式が成り立つ、ax + by = 0」 
ってのが、コーシーリーマン方程式だし、 「どんな道をたどって
歩いても元の場所に戻れば高さは同じ 」ってのがコーシーの積分
定理に対応するわけなんで、ほとんど覚えるものがない。

最初に考えた疑問が、あらゆる綺麗な結果が出て来る原点である「
コーシーリーマン方程式」がなんで成り立つんだよ! ってことだっ
た。実は、複素関数が微分可能ってことは、微分した値として単一
の複素数値を持つ、つまり、複素数の二次元の方向のどっちを見て
も、一つの複素数で表された単一の平面の傾きを持つってことなん
だよね。それは、コーシーリーマン方程式そのものじゃん。だから
方程式であって、定理じゃない。つまり、その方程式が成り立つ関
数しか扱わないって学問なんだよ。調和関数しか扱わないんだから、
そりゃ綺麗な結果が出るわけさ。

綺麗な話には裏があると思った理論でもありました。

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科